【11月11日 AFP】米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領は、8日の中間選挙で予想されていた「赤い波」(赤をシンボルカラーとする共和党の大勝)に乗り、次期大統領選への出馬に弾みをつけるつもりだった。だがふたを開けてみると、同党の獲得議席数は伸び悩み、さらには党内のライバルであるロン・デサンティス(Ron DeSantis)フロリダ州知事が大躍進する結果となった。

 現職大統領の支持率が低迷し、インフレが高進する中で行われる選挙では通常、野党側が大量の議席獲得を見込める。だが今回の中間選挙では、共和党が民主党から下院を奪還するものの、議席数を大きく伸ばすことはできない見通しだ。

 トランプ氏は共和党の選挙運動で全面に立ち、重要選挙区での党公認候補を選ぶ予備選にも影響力を行使。全米各地で集会を開き、2020年の大統領選に不正があったという根拠なき主張を繰り返した。

 だが、トランプ氏がお墨付きを与えた候補者は落選が相次ぎ、それまで共和党が確保していた議席を民主党に奪われる事態にもなった。アナリストや党内からは、選挙結果が振るわなかった責任はトランプ氏にあるとの指摘も上がっている。

 激戦州ペンシルベニアの連邦上院選では、トランプ氏の支持を受けた著名医師のメフメト・オズ(Mehmet Oz)氏が共和党から出馬。民主党は、公職経験がなくニュージャージー州居住歴が長い同氏を徹底的に攻撃し、共和党から議席を奪うことに成功した。

 ただし、例外もある。オハイオ州の連邦上院選では、トランプ氏が支持するJ・D・バンス(J.D. Vance)氏が当選。また米メディアの予測によると、20年の大統領選の結果に異議を唱える共和党候補の当選者数は全米で100人以上に上る見通し。

 一方、フロリダ州知事選では、24年の大統領選出馬を強く示唆しているデサンティス氏が対立候補に圧倒的な差をつけて再選を果たし、トランプ氏の強力な対抗馬としての地位を確固たるものとした。

 選挙翌日、新聞各紙はデサンティス氏の躍進をこぞって報道。アリゾナ州スコッツデール(Scottsdale)でAFPのインタビューに応じた共和党支持者からは、トランプ氏よりもデサンティス氏を選ぶとの声が上がった。

 小規模事業を経営するリサ・クリストファーさん(60)は「トランプ氏にとって重要なのは自尊心だけ」と指摘。「デサンティス氏は押し引きのタイミングを心得ているが、トランプ氏はそうではない」と語った。

 CNNテレビのジム・アコスタ(Jim Acosta)記者が側近の話として伝えたところによると、トランプ氏は9日朝、選挙結果に「激怒」し、「皆を怒鳴りつけていた」とされる。

 同氏は15日に次期大統領選への出馬を表明する可能性をほのめかしていたが、一部の政治評論家からは発表を延期するのではないかとの見方も出ている。(c)AFP/Lucie AUBOURG