【11月6日 AFP】ウクライナ東部ドネツク(Donetsk)州バフムート(Bakhmut)に住むリュドミラ・ハルチェンコさん(63)はある土曜の朝、パンを求めて自宅アパートを出た。ロシアによる侵攻開始以降、あまりしていなかった外出だった。

 1時間後、ハルチェンコさんが自宅に戻ると、部屋はめちゃくちゃになり、ビロードのソファの前にミサイルの弾頭が転がっていた。

 小さなこの町が戦場になってからというもの、外出を控えていたハルチェンコさん。この日は久しぶりに口紅を塗り、買い物バッグを手に家を出た。「パンの配給があると聞き、指定の場所に行ったのです」

 だが、配給の場所に到着すると、近所の住民から自宅アパートにミサイルが落ちたと教えられた。

「間違いであってほしいと願いながら、走って戻りました。でも、悲惨なことになっていました」。外出したおかげで命拾いをしたとハルチェンコさんは付け加えた。

 ミサイル着弾から20分後に消防隊が到着し、火は消し止められた。

 ハルチェンコさんは室内に数歩足を踏み入れた。涙でかすむ目で、天井に開いた穴と引き裂かれた屋根を見上げ、「このアパートは努力の結晶だったのに」とつぶやいた。(c)AFP/Daphne ROUSSEAU