【11月15日 AFP】サッカー元ウクライナ代表のレジェンドであるアンドリー・シェフチェンコ(Andriy Shevchenko)氏がAFPのインタビューに応じ、ロシアの支配から解放された首都キーウ近郊のイルピン(Irpin)で、「ミサイルが着弾した跡でいっぱいの平地を子どもが駆け抜ける様子を目にして」涙が出たと明かした。

 2004年にバロンドール(Ballon d'Or)を受賞したシェフチェンコ氏はまた、周囲の惨状にもかかわらずサッカーをプレーしようとする若手選手の決意に圧倒されたと述べた。

「人生を通して戦争に反対」していた「軍人」を父に持つ46歳のシェフチェンコ氏は2月、ロシアの侵攻に大きな怒りを募らせ、「息さえできないほどの耐えがたい苦痛を感じた」という。

 シェフチェンコ氏は「民主主義にある欧州の中心で、爆弾が投下されたりロケットが飛んでいたりする事実を理解することができなかった」と語った。

「それらは私の家や、私が愛するあらゆる物に向かって飛んでいる。母国を助けるために何をすべきなのか、すぐに決断しなければならなかった」

「私にできることは何か、どうすれば自分が最も力を発揮できるかいろいろと考えた。そして、自分の知名度を生かして、ウクライナのために公に戦うべきだと気づいた」

 武器を手にした同国の他のスポーツスターとは異なり、シェフチェンコ氏は母国の窮状を訴える大使としての役割に就く道を選んだ。

 2002-03シーズンにイタリア・セリエAのACミラン(AC Milan)で欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)を制したシェフチェンコ氏と、女子テニスのトップ選手であるエリナ・スビトリーナ(Elina Svitolina)は、ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領が開設したクラウドファンディングサイト「United24」の大使就任を要請する招待にすぐさま応じた。

 5月18日にキーウでゼレンスキー大統領と面会したシェフチェンコ氏は「2月24日以降でウクライナに来たのはそのときが初めてだった。戦争はすでに2か月半も続いており、ロシア軍は街から撤退したばかりだった」とコメントした。

「空虚ながら不屈のキーウを目にした。大統領との面会同様、それは非常に感情に訴える瞬間だった」

 United24は防衛や地雷除去、医療といった急を要する必需品をまかなったり、侵攻後に荒廃した国を復興するための寄付金を集めたりすることを目的に、大統領によって立ち上げられた。

 医療や復興に向けた資金集めを重点的に行っているシェフチェンコ氏によれば、支援してくれた古巣クラブには恩義があるのだという。

「ウクライナを支援するため、ACミランが私の背番号が入った特別なTシャツを販売すると発表したときの気持ちは言葉では表せない」と述べた。

 このTシャツの販売で集まった20万ユーロ(約2900万円)は、ロシアのミサイル攻撃で荒廃したイルピンにある子ども用サッカーグラウンドの再建に充てられる。(c)AFP/Pirate IRWIN