国慶節向け映画『万里帰途』の大ヒットにみる中国映画事情
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【10月21日 東方新報】中国の建国記念日、国慶節(10月1日)の大型連休で一番のヒット映画は、中国の外交官の活躍を描いた『万里帰途(英題:Home Coming)』だった。
今年は国慶節に向け7本の新作映画が封切られた。うち『万里帰途』を含む『平凡英雄(英題:Ordinary Hero)』『鋼鉄意志(英題:Steel Will)』の3本は実話に基づいたストーリーで、最近の観客の好みを物語る。
国慶節の連休は10月1日から7日間。この間の興行成績で『万里帰途』は断トツのトップとなり、興行収入は10億2300万元(約211億9728万円)。この間の映画の全体の興行収入は14億9600万元(約309億9817円)に上ったが、そのうちの7割近くを占めるヒットとなった。
『万里帰途』は、監督が饒暁志(Rao Xiaozhi)氏で、主演は張訳(Zhang Yi)氏。中国の外交官らがアフリカで戦乱に巻き込まれた自国民を救出するため、命懸けで奮闘する姿を描いており、実話に基づく。勇気と感動の物語が、口コミで一気に評判となり、本モノの外交官からの評価も上々だという。
ヒットの第2位は、やはり実話に基づいた作品の『平凡英雄』。興行収入が、1億1900万元(24億6576万円)に上った。「平凡」は、事故で腕を切断した少年の接合手術をめぐる医師らの物語。
中国で国慶節は春節(旧正月、Lunar New Year)と並ぶ長期休暇。そんな大型連休に映画を見に行くスタイルも定着しつつあるが、専門家は、中国での近年の映画の好調ぶりは、中国映画の新たな傾向が背景にあると指摘する。それは、しっかりしたイデオロギーやメッセージ性がありながら、商業映画としての娯楽性や芸術性を併せ持つ作品が増えたこと。専門家は、これを「新主流映画」と呼ぶ。今回ヒットした『万里帰途』や『平凡英雄』もそうした作品だ。
「新主流映画」の系譜といえる『我和我的祖国(英題:My People,My Country)』『中国機長(英題:The Captain)』が、国慶節向けに公開され大ヒットしたのは2019年。それまで年間を通じた映画の興行収入における国慶節期間の売り上げは、3〜4%だったが、同年は一気に約7%にまで跳ね上がったという。
加えて、国慶節期間中に、一部の観客が新作のみならずロングランものを見るようになったのも新たな傾向。今年は、国慶節期間の興行収入のベスト10に、公開からすでに2か月たった『独行月球(英題:Moon Man)』や、1か月たった『哥、你好(英題:Give Me Five)』もランクインした。これらはいずれもコメディー。中国の人びとの生活スタイルの変化や好みの多様化を反映しているのかもしれない。
ちなみに今年ヒットのトップ2、『万里帰途』と『平凡英雄』の観客は女性の方が多かったという。中国映画は、男性客の足を映画館に運ばせる努力も含め、まだまだ発展ののり代がありそうだ。(c)東方新報/AFPBB News