イラン製無人機投入のロシア、工業力低下を露呈
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【10月20日 AFP】ロシアがウクライナでイラン製のドローン(無人機)を使用していることについて、専門家は、ロシアの工業力の低下と、ドローン市場におけるイランの存在感の高まりが鮮明になったとの見方を示している。
米政府は、イランはロシアに数百機のドローンを提供したとみている。ウクライナ側は、イラン製ドローンが都市やエネルギー関連インフラを標的とする最近の攻撃に投入されていると主張している。
■2種類を特定
これまでのところ、ウクライナ上空に飛来したイラン製ドローンについては、異なる機能を持つ2種類が特定されている。一つは「シャヘド136(Shahed 136)」という比較的安価な自爆型ドローンで、爆発物を搭載し、全地球測位システム(GPS)とプログラム機能により目標に向かって自動的に飛ばすことができる。
フランス・パリに拠点を置く研究者ピエール・グラセール(Pierre Grasser)氏は、「(シャヘド136は)かなり低空を飛行し、数百キロ圏内の静止目標への攻撃が可能だ」と説明する。
AFP取材班も、17日に首都キーウに飛来したシャヘド136を撮影した。
もう1種類は「モハジェル6(Mohajer 6)」。米陸軍士官学校のビクラム・ミッタル(Vikram Mittal)教授は、「トルコ製の『バイラクタルTB2(Bayraktar TB2)』と大きさや機能が似ている」と述べている。
ロシアの戦車や装甲車へのミサイル攻撃に使われているバイラクタルは、侵攻の初期段階で善戦したウクライナの抵抗のシンボルとなった。バイラクタルをテーマとした歌も登場し、ソーシャルメディアで広く共有された。
モハジェルやバイラクタルは、イラクやアフガニスタンなどに投入された米国の「プレデター(Predator)」同様、中高度・長時間滞空型(MALE)のドローンとして知られる。
フランス国際関係研究所(IFRI)のジャンクリストフ・ノエル(Jean-Christope Noel)氏はモハジェルやバイラクタルについて、「武装ドローンや徘徊(はいかい)型兵器同様、敵が防衛や応戦の手段を持っていない場合、極めて効果的だ」と説明する。
ミッタル氏は、初期段階でバイラクタルが戦果を上げた大きな要因は「戦場における新兵器だった」ことにあると解説。「ウクライナはいずれはイラン製ドローンを撃ち落とすか鹵獲(ろかく)して分析し、対抗システムを構築するだろう」と述べた。ただ、それは数か月を要するプロセスになるという。
ウクライナ軍が現時点でドローンを撃ち落とすために使えるのは、日中は肩撃ち式、夜間はレーダー搭載型の対空ミサイルになる。
ウクライナ軍はまた、シャヘド136には衛星誘導なしに標的に到達するためのバックアップ機能がないことから、予定軌道からそらせるためにGPSジャミング(電波妨害)技術の使用を試みる可能性がある。
一方、グラセール氏は、ロシアにとっては、自爆型ドローンを使えば「1発で150万〜200万ドルもする高価で貴重な巡航ミサイルを温存できるため、戦費を節約できる」と説明する。「最大の欠点は静止目標しか攻撃できないことだ」
同氏は「(自爆型ドローンは)戦場に展開する部隊にとっては脅威とはならない。戦況には影響しないだろう」と予想する。