【10月14日 AFP】漫画「ベルサイユのばら(The Rose of Versailles)」が今年で誕生50周年を迎えるのを記念し、東京で展覧会が開かれている。フランス革命をテーマにしたこの作品は、それ自体がさまざまな意味で革命的だった。

「ベルばら」の愛称で知られる同作は、きらびやかな宮殿を舞台に、華やかな衣装をまとった登場人物の情熱的な恋愛模様を描き、少女漫画として商業的に大きな成功を収めた。

 ベルばらには2人のヒロインがいる。フランス王妃マリー・アントワネット(Marie Antoinette)と、男性として育てられたオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(Oscar Francois de Jarjayes)だ。オスカルは長じて、マリー・アントワネットの近衛隊長となった。

「ベルばら」は文化面で大きな影響を与え、ファンがベルサイユ(Versailles)宮殿に押し寄せた。また、当時の漫画作品ではまれだった強い女性たちを描いて称賛を集めた。

 連載が始まったのは1972年。アニメ化され、日本国外でも「レディ・オスカル(Lady Oscar)」として特にフランスで人気を博したほか、ミュージカルとして舞台化もされた。単行本の世界発行部数は2000万部を超えている。昨年には初めて英語版が刊行され、人気の健在ぶりが示された。

 シンガポール国立大学(National University of Singapore)のデボラ・シャムーン(Deborah Shamoon)准教授(日本学)はAFPに対し、「オスカルは少女たちにとって、魅力的で理想的な主人公だ」と語り、「この作品が少女漫画においていかに重要で影響力があったかということについては、どれだけ強調してもし過ぎには当たらない」との考えを示した。

 またシャムーン氏は、オスカルと幼なじみのアンドレ(Andre)との恋物語について、日本の漫画では珍しいものだと指摘。「アンドレはオスカルの全てを受け入れ、彼女を変えようとしたり、典型的な女性らしさを求めたりしない。少女漫画に描かれる異性間の恋愛において、こうした平等は現在でも珍しい」と解説した。

「ベルばら」の作者、池田理代子(Riyoko Ikeda)さんは左派の政治運動に参加したこともあり、作品を通して固定観念を意識的に打ち壊そうとしていたと明かしている。

 池田さんは、展覧会の開催に合わせて出されたコメントで、当時は男女格差が大きく「女、子どもに歴史なんて理解できない」と言われたものの反発し、「必ず当ててみせます」と豪語したと振り返っている。

 展覧会の会場には、大勢が来場している。ベルサイユ宮殿風のアーチの下に置かれたキャラクターの等身大パネルを撮影する人々の姿もあった。(c)AFP/Etienne BALMER