【10月13日 東方新報】儒教の祖・孔子(Confucius)の出身地で、料理や多くの伝統文化を誇る中国・山東省(Shandong)が、その魅力をアピールする取り組みを強化している。

 紀元前から「魯」「斉」などの国が栄え、「三国志」の時代は青州と呼ばれた山東省。この地では秦の始皇帝が北方に長城(Great Wall)を築く以前、長さ600キロに渡る「斉の長城」が建造されている。魯との戦いで斉が築いた防御壁で、現存する最古の長城。2600年以上の歴史を持ち、保存状態が良く考証可能な遺跡であることから、「長城の父」とも呼ばれている。

 日本で中華料理と言うと、北京ダックや上海ガニ、四川マーボー豆腐などを思い浮かべる人も多いだろうが、山東料理は中国八大料理の一つに数えられる(四大料理の一つとも言われる)。華北平原の農産物と山東半島が突き出た黄海の海の幸を生かし、ナマコのしょうゆ煮込みなど素材の味を生かした多彩な料理が特徴。明・清の時代には健康志向の強い皇族に食され、宮廷の調理場の共通語は山東語だった。歴代皇帝が孔子の祭典でささげる料理から発展した繊細な「孔府菜(曲阜料理)」も有名だ。

 長年受け継がれた伝統工芸も多い。きれいな装飾を施し、お祝い事などで作られる花饃(飾り蒸しパン)は1000年以上の歴史を誇る。精緻で鮮やかな「煙台切り絵」や伝統の刺しゅう工芸「魯刺繡」は、その芸術性が国内外で高く評価されている。

 こうした文化的財産を生かそうと山東省文化観光局は9月、文化遺産の保護と活用のための10大プロジェクトを実施すると発表。「斉の長城保護条例」を可決し、長城の修復や科学的管理を強化することを決めた。また、高速道路のサービスエリアやショッピングセンター、観光地などで伝統文化を実演する拠点「山東手造」を次々と設置。多くの人出でにぎわう場所に職人が出向き、その魅力を目の前で披露する。

 8月下旬には、2年に1回開かれる「第7回中国無形文化遺産博覧会」を済南市(Jinan)で開催。「現代生活をつなぎ、魅力ある輝きを放つ」をテーマに、オンラインを含め全国各地の無形文化遺産伝承者332人が参加した。9月下旬には山東省から南部のマカオに「遠征」し、文化観光誘致イベント「孔子の故郷、山東のおもてなし」を開催。会場でマカオ市民や観光客に山東料理をふるまい、伝統の味をPRした。

 2020年国勢調査で、山東省の人口は広東省(Guangdong)の1億2601万人に次いで多い1億152万人。GDP(域内総生産)も広東省、江蘇省(Jiangsu)に次ぐ3位。中国屈指の「大国」である山東省が文化面でもアピール力を高めようとしている。(c)東方新報/AFPBB News