【9月27日 東方新報】中国北部の山西省(Shanxi)で、地元が誇る歴史遺産を市民が選ぶ「総選挙」が実施されている。

 山西省は紀元前の春秋時代には「晋」として栄え、中華文明の一翼を担ってきた古い歴史を持つ。約51窟の石窟寺院がある「雲崗石窟(Yungang Grottoes)」はガンダーラ美術やギリシャ様式の影響を受け、世界文化遺産に登録されている。中国仏教の聖地・五台山(Wutai Mountain)、山西省を離れた人にとってのふるさとの象徴・洪洞県(Hongtong)の大槐樹(エンジュの大木)、今も歌い継がれる山西民謡、繊細な匠(たくみ)の技が光る広霊切り絵…。悠久の歴史に裏打ちされたさまざまな文化や史跡がある。「三国志」を代表する武将・関羽(Guan Yu)の出身地でもある。

 山西省文化観光局は、専門家の審議を経て古代の建物や景観、無形文化遺産、お祭りなどから40種類をノミネートし、このうち20種類を「山西文化記憶」に選ぶプロジェクトを開始。中国のSNS「微信(ウィーチャット、WeChat)」の山西省公式アカウントから市民の投票を募ることにした。

 9月14日午後1時半から投票受け付けを始め、1人1回しか投票できないにもかかわらず、15日午後3時すぎには91万人が投票した。投票は9月26日で締め切る。投票結果と専門家の審議を経て選ばれる20種類には「山西文化記憶」のプレートと証明書が発行され、山西省と中国郵政が共同して記念切手を発行する。

 山西省文化観光局の陳少卿(Chen Shaoqing)副局長は「インターネットが急速に発展した時代に合わせてオンライン投票を採用することは、市民参加を促し、プロジェクトを広めることに大いに役立つ」と手応えを感じている。

 沿岸部を中心に経済成長が著しい中国で、内陸部の山西省は経済開発が遅れている。しかしかつては鉄の産出や北方民族との交易で栄え、商人たちは米、塩、絹、綿などの仲買で富を築いていた。関羽も若き日は塩商人だったとも言われている。山西商人は明代・清代には朝廷の資金も扱い、国の財政を支える存在だった。山西文化記憶プロジェクトは、山西人のDNAに刺激を与え、かつての栄光を今に取り戻すきっかけを与えるかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News