【10月19日 AFPBB News】10月6日は国際協力の日。6人の大学生がそれに先立ち、報道写真をモチーフにして、命や尊厳、生活を守るために次世代を担う自分たちに何ができるのかを問うメッセージを発信した。

 今月2日、東京国際フォーラムで開催された国際協力イベント「グローバルフェスタJAPAN2022」のメインステージで、国際協力機構(JICA)主催のメッセージ作品コンテストが行われた。

 テーマは、「『世界の人々の命、暮らし、尊厳を守るには』〜知って・伝える力がひとを動かす〜」。世界三大通信社の一つ、AFPの報道写真に日本語のタイトルとメッセージを付けた作品を募集。全国から多数の応募があった。

 最終選考に残った大学生6人は、自ら選んだ写真を紹介し、そのイメージから感じたことや同世代に伝えたい思いを会場とオンラインの参加者に向けて語った。

 特別審査員は、ニュース番組のコメンテーターとしても知られる株式会社arca(アルカ)の代表取締役社長でクリエイティブディレクターの辻愛沙子氏、AFPBB Newsの伊藤真悟編集長、JICAの竹田幸子広報部長兼JICA地球ひろば所長の3人。司会はお笑い芸人の吉村崇さん(平成ノブシコブシ)が務めた。

JICA主催のメッセージ作品コンテストで、司会を務めるお笑い芸人の吉村崇さん(中央)。東京都内で(2022年10月2日撮影)。(c)AFPBB News

最優秀作品


 候補者によるプレゼンテーションの後、最優秀作品が発表された。AFPBB News部門には、アフガニスタンの女性教育問題を取り上げた濵崎青也さん(早稲田大学)の「奪われた未来-窓のそとには-」が選ばれた。

 昨年8月にイスラム主義組織タリバンが政権を奪還したアフガンでは、女子教育への制限が今も続いている。濵崎さんは、本を抱えた女性がガラス越しに遠くを見つめている写真を選び、誰もが享受すべき権利が奪われている現状を訴えた。

「グローバルフェスタJAPAN2022」で行われた、JICA主催のメッセージ作品コンテストの様子。東京都内で(2022年10月2日撮影)。(c)AFPBB News

「彼女を閉じ込める部屋の窓ガラスが、その夢さえも断ち切っているようだ」と濵崎さんは解釈する。

 コピーライターでもある特別審査員の辻氏は、窓ガラスについて、性別や人種などを理由に活躍の道が閉ざされてしまう「ガラスの天井」を連想させ、「とてもクリエーティブ」だと評価。「表現としてクオリティーが高い。すごく感銘を受けた」と語った。

JICA主催のメッセージ作品コンテストで、特別審査員を務めたarca代表取締役社長でクリエイティブディレクターの辻愛沙子氏。東京都内で(2022年10月2日撮影)。(c)AFPBB News

 また、AFP Forum部門には、ウクライナ難民をテーマにした尾形巴さん(早稲田大学)の「突然失われた日常」が選ばれた。

 尾形さんは、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて祖国を離れた少女が、ぬいぐるみを抱えて不安げにカメラを見つめている写真を選んだ。「一人ひとりに多様な人生があり、それは誰にも壊すことはできません」と語る。

 長崎で生まれ育ち、平和教育に接することが多かったという尾形さん。「戦争は市民の生活を一瞬にして、そしてむごい形で奪ってしまう」と語気を強める。普段から学び、想像し、そして一人ひとりの日常に思いをはせることが大切だと話した。

 AFPBB Newsの伊藤は、「この作品は、ウクライナから遠く離れた日本で、自分たちは何ができるのかを問い掛けている。私自身もニュースに携わる人間として、この作品を通じてメディアの役割とは一体何かということを改めて考えさせられた」とコメントした。

     
「グローバルフェスタJAPAN2022」で行われた、JICA主催のメッセージ作品コンテストの様子。東京都内で(2022年10月2日撮影)。(c)AFPBB News

 受賞発表を受けて濱崎さんは、日常会話の中で国際問題に関する話題をいかに取り上げていくかが課題だとし、「輪を広げていくような形で伝えていけたらと思う」と語った。一方、尾形さんは「幾つになっても学び続ける重要性をきょう改めて感じた」と話した。

 候補者とのトークセッションで、司会の吉村さんは、世界各地から漂着したごみを集めて生計を立てる人々のテレビ撮影に参加した経験を披露。「たぶん一生(彼らは)そこから逃れられない」と、普段はあまり見せない真剣な表情で語った。

JICA主催のメッセージ作品コンテストで、司会を務めるお笑い芸人の吉村崇さん。東京都内で(2022年10月2日撮影)。(c)AFPBB News

最終候補作品


 審査員からは、最終候補に残った他の作品についてもコメントが寄せられた。

◆「みんな幸せになっていい。法は、そのために」佐藤郁夫さん(国際基督教大学)

 LGBTQなど性的少数者の権利をテーマとした作品。佐藤さんは、スイスで同性婚が合法化されたのを受け結婚式を挙げた同性カップル2組が、満面の笑みを浮かべる写真を選んだ。審査員からは、笑顔の裏にある事情を読み解き、法律の意義について自分なりの解釈を付け加えた「とても深い作品」との評価があった。

◆「勉強したいだけなのに。」横山果南さん(東京大学)

 横山さんは、アフガニスタンでタリバンが女子中等教育の禁止を発表する直前に、笑顔で登校する女子学生の写真を題材にした。審査員からは、学生の笑顔と、今、アフガンで起きている現実とのコントラストにフォーカスした独特の視点を評価するコメントがあった。

◆「ウクライナ危機から難民支援の輪を広げる」山田明日見さん(国際基督教大学)

 ポーランドに身を寄せるウクライナ難民の写真を通じて、難民受け入れにおける二重基準や人種差別の問題を提起。山田さん自身、難民支援に関わっているという。審査員からは、自らの経験が作品の幅を広げていて、ワンランク上のプレゼンテーションだったとの声があった。

◆「世代を超えたゴミ回収」加藤沙也花さん(東京女子大学)

 加藤さんは、シリア難民キャンプのごみ捨て場で、袋を抱えた1人の幼子がレンズを見つめる写真を題材にした。「貧困の連鎖は不十分な教育にある」と読み解く。審査員からは、想像力に富んだ言葉がたくさん詰まっていて、学ぶところが多いと高い評価を受けた。

「グローバルフェスタJAPAN2022」で行われた、JICA主催のメッセージ作品コンテストの様子。東京都内で(2022年10月2日撮影)。(c)AFPBB News

 コンテスト全体について、審査員からは、報道写真が持つメッセージを自分なりに読み解き、主体的に理解を深めることを通じ、新しい形のアクティブラーニングにつながるとの期待が寄せられた。

「このコンテストのすばらしさは、作者がそれぞれの感性で写真を解釈し、自分なりのメッセージを伝えることができるところ。正解はない。逆に言うと全てが正解。コンテストを通じて、次世代の皆さんが感性を磨き、考える力を付けるきっかけにしてもらえれば」と、審査員からの熱いエールも送られた。

人間の安全保障


 JICAの竹田氏は、今回のテーマは「人間の安全保障」そのものだと指摘。それは「全ての人々が恐怖と欠乏を免れ、尊厳を持って生きられる、そういった社会をみんなでつくっていこう、つくっていかなくちゃいけない、ということを示している概念」だと説明した。

 竹田氏は、「応募作品の中には、地球環境、新型コロナウイルス、気候変動、自然災害など、今われわれに襲い掛かってきている脅威をテーマとして、それぞれに苦しむ人々に焦点を当てた写真を使いながら自分の言葉でメッセージを込めた作品がたくさんあり、われわれも大変勉強になった」とコメント。

「今後は伝えたい人たち、その伝えた先の人たちと一緒に仲間になって話し合いながら、知って、考えて、伝えたことをさらなるアクションにつなげていっていただければ」と期待を示した。

JICA主催のメッセージ作品コンテストで、特別審査員を務めたJICAの竹田幸子氏。東京都内で(2022年10月2日撮影)。(c)AFPBB News

最優秀・優秀6作品のギャラリーはコチラ

 今回のグローバルフェスタでJICAは、「スポーツで世界を変える」をテーマとしたトークショーも主催。スポーツの可能性をめぐり意見交換を行った。ゲストには元ラグビー日本代表選手の廣瀬俊朗氏、元陸上競技日本代表の横田真人氏、南スーダンの陸上選手グエム・アブラハム氏が招かれた。

 コンテストに引き続き、「南アジア ふしぎ発見!」と題したクイズコーナーも設けられた。コンテストで司会を務めた吉村さんが再び参加。人気お笑いグループ「ぼる塾」も加わり、会場を大いに盛り上げた。(c)AFPBB News

■過去のJICA×AFPBB News のセミナーは下記から

 激変する世界の中で人間の安全保障をアフリカから考える

 わたしたち若者と発展途上国における貧困問題について

 当日のステージの全編動画はyoutubeでもご覧いただけます   

JICA主催のメッセージ作品コンテストに参加した特別審査員と大学生ら。東京都内で(2022年10月2日撮影)。(c)AFPBB News