■ロシアには「民主主義が必要」

 ロシアでは軍への中傷を禁じる新法が制定された。父親がウクライナでの体験を公の場で話せば、拘禁刑を科される恐れがある。しかし、自宅や別荘などの家族だけの空間では、目撃してきたことを率直に口にするという。

 ただ、攻撃的になることもあり、娘2人とのけんかはしょっちゅうだ。父親はメンタルケアを受けるつもりはないという。

 こうした状況に耐え難くなった姉妹は8月、家を出た。女性の権利団体にアパート探しを支援してもらい、罰金を支払うためにクラウドファンディングで集めた資金などでほそぼそと暮らしている。

 それでも、姉妹は家族と縁を切りたいとは思っていない。「私たちは父を愛している。家族を拒絶するつもりはない」とエリザベータさん。

 父親や母親(38)は、同世代の多くのロシア人と同じく政治に無関心だ。一方の姉妹は、反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏の影響を受け、幼い頃から政治に興味があった。両親に反対されても、政治運動への関与をやめる気はない。

 投獄されるのは「まったく恐れていない」と姉妹は話す。「極端な暴力」に直面しているウクライナ国民の「強さ」に感心さえしているという。

「私たちはリベラルだ」とエリザベータさんは語った。「政府批判をいとわない。ロシアに民主主義を築く必要がある」 (c)AFP/Romain COLAS