■「戦争は犯罪」

 父親の部隊は、ウクライナの首都キーウの包囲戦に参加した。調査報道によれば、部隊が配置されたのはロシア軍による民間人虐殺があったとされるブチャ(Bucha)付近だった。

 ロシアは民間人に危害を加えてはいないと主張しているが、姉妹は、父親が何らかの形で関与していたのではないかと疑っている。「父は誰も殺していないと言っている」とエリザベータさん。

「でも、戦争はそれ自体が犯罪だ」とアナスタシアさんが続ける。「そう、だから戦争を支持したり、参加したりすることが犯罪になる」とエリザベータさんは結論付けた。

 姉妹はウクライナへの軍事侵攻に断固として反対している。ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が発表した「特別軍事作戦」にショックを受け、3月初めに「ウクライナに平和を、ロシアに自由を」と書かれたプラカードを手に街頭デモに参加して拘束された。刑務所には入らずに済んだが、違法集会を組織したとして約330ユーロ(約4万6000円)相当の罰金を科された。

 5月に父親から、復員に必要な行政手続きを申請してほしいとの依頼が届いた。父親は6月中旬に「健康上の理由」で戦場を離脱し、今は約20年勤めた軍を除隊する手続きを進めている。

「多大なストレスが、父の世界観を変えてしまった。仲間を失い、遺体だらけの光景を目の当たりにしたのだ」とエリザベータさんは語る。