【10月2日 AFP】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong un)朝鮮労働党総書記は先月、「核は絶対に放棄しない」と宣言し、同国の最高人民会議(国会に相当)で先制攻撃を辞さない「核武力政策に関する法令」を採択した。専門家は、世界中で核兵器政策の力学がエスカレートしている懸念すべき傾向に沿った動きだと指摘している。

 東西冷戦(Cold War)以来、核兵器は最終手段としてのみ使用され得る抑止力として機能してきた。しかし、ロシアが今年2月にウクライナに侵攻して以降、その流れが様変わりしてきたと専門家は指摘する。

 ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は先月21日に行った演説で、ウクライナ侵攻では核兵器を含めすべての軍事手段を行使する用意があると述べ、「はったりではない」と強調した。

 北朝鮮が新法を導入し、核保有国としての地位は「不可逆的」になったと宣言したことについて、延世大学北朝鮮研究所(Yonsei Institute for North Korean Studies)のキム・ジョンデ(Kim Jong-dae)氏は、「一国が核兵器の使用を選択肢の一つとして考慮する新時代に突入した。冷戦時代のドクトリンとは対照的だ」と指摘。北朝鮮の新たな政策には「世界における核の力学の変化を見て取った金(正恩)氏の考えが反映されている」と言う。

 キム氏によると、北朝鮮がこうした反応を示した背景には米国も関係している。米国防総省はドナルド・トランプ(Donald Trump)政権下の2018年、近年のロシアの動きへの対抗手段として、「戦術核兵器」と呼ばれる低出力の小型核兵器を開発するべきだと主張した。

 キム氏は「北朝鮮の新たな動きを無分別、または金氏の気まぐれなどと片付けてはならない。金総書記は世界の新たな動向を見逃さずに反応しているのだ」と述べた。