■政治家との逸話

 2015年にマルタで開催された英連邦(Commonwealth)首脳会議でのカナダのジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相とのやり取りは、笑いを誘った。トルドー氏が、女王は1935年からカナダの切手の「顔」であり、女王に面会するカナダの首相は自分で12人目だとあいさつすると、女王は笑顔で「ありがとう、とても老け込んだ気持ちにさせてくれて」と応じた。

 ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)元米大統領も、女王のウイットから逃れることはできなかった。2007年、ホワイトハウス(White House)に女王を迎えたブッシュ氏は、米建国200周年記念で女王が訪米した年について、1976年と言うべきところを「1776年」と間違えた。翌日、英大使公邸での晩さん会で乾杯の音頭を取った女王は、こう切り出した。「『1776年にここを訪れたとき』という言葉でスピーチを始めるべきか迷いました」

 テリーザ・メイ(Theresa May)元英首相は9日、スコットランドのバルモラル城(Balmoral Castle)で女王のピクニックに招かれた際に「災難」に見舞われた思い出を英下院で打ち明け、議場を爆笑の渦に巻き込んだ。

「全員で協力して食べ物や飲み物をテーブルに並べた。チーズの皿をテーブルに運んでいたら、チーズを落としてしまった。私はとっさの判断を迫られた」とメイ氏。「チーズを拾って皿に戻し、テーブルに置いた。振り返ると、女王陛下が私の一挙手一投足を注意深く見守っていた。私は陛下を見つめた。陛下は私を見てただほほ笑んでいた。チーズはそのままテーブルに放置された」

 英労働党のベテラン議員ハリエット・ハーマン(Harriet Harman)氏は、1998年の内閣改造で更迭された時、女王の振る舞いに慰められたと明かした。「解任され、予定表は真っ白になった。電話も鳴らなくなった。そこへバッキンガム宮殿(Buckingham Palace)から電話がかかってきて、事務所の皆が驚いた」

「誰も私と関わりたがらなかったのに、陛下は私に会いたいと言い、お茶に招待して労をねぎらってくれた」

 ジョンソン前英首相は、女王のドライビング・テクニックについて証言した。「この目で見たことだが、女王は自ら愛車を運転していた。警官も護衛官も伴わず、スコットランドの大地を驚異的なスピードで疾走していた」