【9月5日 AFP】1990年代に絶大な人気を誇ったハリウッド(Hollywood)俳優ブレンダン・フレイザー(Brendan Fraser)の新作『The Whale(原題)』が4日、ベネチア国際映画祭(Venice International Film Festival)でプレミア上映された。肥満男性を演じたフレイザーは高く評価され、早くもアカデミー賞(Academy Awards)の最有力候補との声も出ている。

 フレイザーは、筋骨隆々の二枚目で「ハムナプトラ(The Mummy)」シリーズや『ジャングル・ジョージ(George of the Jungle)』など家族向け大作に出演し、人気を集めた。しかし、2000年代後半には人気が下り坂になっていた。

『The Whale』では、娘との関係改善を試みる体重250キロの英文学教授チャーリーを演じている。

 米映画情報サイト「インディワイヤ(IndieWire)」は、ブレンダンとルネサンス(復活)を掛け合わせ「ブレンダネサンスが始まった! フレイザーはあらゆる意味で非常に優れた演技を見せた」と評した。

 監督は2008年に『レスラー(The Wrestler)』でベネチア映画祭の最高賞、金獅子(Golden Lion)賞を獲得したダーレン・アロノフスキー(Darren Aronofsky)氏。

『ブラック・スワン(Black Swan)』『レクイエム・フォー・ドリーム(Requiem for a Dream)』などダークな作風で知られるが、『The Whale』には深い楽観的なメッセージが込められている。

 話が進むにつれ、チャーリーの肥満の理由が自身の性的指向と宗教に関するトラウマによるものであることが明らかになってくる。だが、そうした問題を抱えつつもチャーリーは、世界の明るい面を見続ける。

 フレイザーは役柄について「チャーリーはこれまで演じた中でも群を抜いた英雄だ」「他人の良い面を見つけ、それを引き出せるというスーパーパワーを持っている」と語った。

 アロノフスキー監督は、それこそが「世界に伝えたい最も重要なメッセージだ」と話した。

 米メディアでは、元から肥満の役者がチャーリー役を演じるべきだったという批判もあった。

 これについて監督は、地球上のあらゆるタイプの俳優を検討したがピンとこなかったが、ある日、フレイザーが出演するブラジルの低予算映画のトレーラーを見てひらめいたと説明した。

『The Whale』は劇作家サミュエル・D・ハンター(Samuel D Hunter)氏が書いた戯曲を元にしている。

 映画の脚本制作にも携わったハンター氏はベネチア映画祭でチャーリーのキャラクターについて、「過食で自分自身を癒やそうとした経験があり、非常に個人的な体験を元にしている。私は同性愛者で、原理主義的な宗教の高校に通っていた」と話した。

「この作品を書くのは怖かった。愛と共感の物語という形でしか書けなかった。チャーリーには暗い海から見える灯台のような存在になってほしかった」 (c)AFP