【9月5日 AFP】南米チリで4日、アウグスト・ピノチェト(Augusto Pinochet)軍事政権下に制定された憲法に代わる新憲法草案の是非を問う国民投票が行われ、反対が賛成を大きく上回り否決された。

 開票率88%の時点で、賛成は38%にとどまり、反対が62%となっている。世論調査結果では最大10ポイント差で否決されるとみられていたが、予想を上回る差が付いた。

 チリでは2019年10月、地下鉄料金値上げに抗議する学生主導のデモが、新自由主義的な経済システムや不平等の拡大に反対する大規模な抗議デモに発展。これを受け、新憲法の制定が決まった。

 ただ、388条から成る新憲法草案は議論を呼び、有権者の混乱を招いた。反対派は、人口1900万人の約13%にとどまる先住民が優遇され過ぎていると懸念を表明していた。

 新憲法案には、より福祉に基づいた社会の建設、先住民の権利拡大、中絶合法化などが盛り込まれていた。また、性・生殖に関する権利の保障や環境保護、天然資源の保護もうたわれていた。さらに、上院をより権限の弱い「地方代表議会」に置き換え、公職の半数以上を女性が占めることを義務付けるなど、政治体制を抜本的に見直す内容だった。

 中部ビオビオ(Biobio)州の小さな町トゥカペル(Tucapel)でAFPの取材に応じた木工職人の男性(47)は、地元では草案に反対の声が強いとし、「人々は変化を恐れている。食べるものも仕事もあるのに、それを失うのではないかと思っている」と語った。

 新憲法案が承認されれば社会に不安と不確実性をもたらし、経済に悪影響を及ぼすと懸念する声もあった。(c)AFP/Paulina ABRAMOVICH, Paula BUSTAMANTE