【7月5日 AFP】南米チリで4日、独裁政権時代に制定された現行憲法に代わる新憲法を起草する制憲議会(155議席)が発足し、初審議で先住民マプチェ(Mapuche)の女性で学者のエリサ・ロンコン(Elisa Loncon)氏(58)が議長に選出された。

 現行憲法はアウグスト・ピノチェト(Augusto Pinochet)の独裁体制下(1973~90年)で制定されたもの。その後30年間にわたる民主主義体制下で改正されてはきたものの、経済先進国の中でも際立つ社会的不平等の温床とみなされ、国民には不評だった。

 新憲法は、一部のエリート層が占有してきた権力をより公正に国民に分散することを目指す。首都サンティアゴで4日行われた制憲議会議員の任命式では、5月の選挙で当選した155人全員の名前が1人ずつ読み上げられた。

 制憲議会は、弁護士、教師、主婦、科学者、ソーシャルワーカー、ジャーナリストなど多彩な顔触れから成る。議員の半数は女性で、17人が先住民を代表する。

 96票を獲得して議長に選出されたロンコン氏は、壇上でマプチェの旗を掲げ、制憲議会はチリの多様性を代表するものとなり「チリを変えるだろう」と述べた。続けて、「これは私たちの先祖の夢で、その夢は実現した。兄弟姉妹の皆さん、チリを再発見し、マプチェや(中略)この国を構成する全ての民族と関係を築くことは可能だ」と訴えた。

 議員らの多様性と、公職経験のない左派寄りの無党派層出身者が多い点、単独で拒否権を有する勢力がないことなどから、新憲法起草までには妥協や譲歩が避けられない見通し。審議が行き詰まるなど、国民の期待に応えられないのではないかとの懸念も指摘されている。

 一方、人々の間には希望も広がる。イエズス会士のフェリペ・ベリオス(Felipe Berrios)司祭は、「国全体から代表者が出て、どのような国にしたいかを協議する」のはチリ史上初だとAFPに語った。(c)AFP/Miguel SANCHEZ, Paulina ABRAMOVICH