【9月1日 AFP】台湾の半導体大手、聯華電子(UMC)創業者の曹興誠(ロバート・ツァオ、Robert Tsao)氏(75)は1日、私財10億台湾ドル(約45億円)を投じ、中国の台湾侵攻が現実となった場合に防衛支援を行う「民間の勇士」300万人以上を育成する計画を発表した。

 曹氏は台湾で最も成功した大物実業家の一人。多くの台湾財界人と同様に中国に巨額投資を行っており、対中問題では長く慎重姿勢を取ってきたが、近年UMCの役職を退いて以降は率直な発言が増えている。

 防弾チョッキを着て記者会見に登場した曹氏は、中国が台湾に対して武力を行使すれば「意図的な虐殺、悪質な戦争犯罪、人道に対する罪」になると警告。今後3年間で、台湾軍と連携して活動できる「黒熊勇士」300万人の訓練に6億台湾ドル(約27億円)を、「狙撃手」30万人の育成に4億台湾ドル(約18億円)を充てると説明した。

 曹氏は、中国の脅威は実在すると主張。「台湾に対する中国共産党の脅威は増大している。この脅威との戦いは、奴隷制に対する自由、権威主義に対する民主主義、野蛮に対する文明を意味する」と述べた。

 米国防総省の推計では、中国軍の兵力100万人に対し、台湾軍の地上戦力は8万8000人で圧倒的に不利な状況にある。台湾人男性の兵役義務は現在、わずか4か月だ。

 ロシアの侵攻を受けたウクライナの戦いぶりに台湾の人々の注目が集まる中、米国や台湾の軍事専門家は、民間人への戦闘訓練を含む非対称戦略、通称「ヤマアラシ戦略」を採用するよう台湾政府に助言している。

 記者会見で曹氏は、台湾を「もう一つの香港」にしてはならないと強調。「中国共産党の本質はフーリガンだ。彼らはソビエト連邦から暴力とうそを学んだ。中華人民共和国は、政府と国家を装ったギャング組織だ」と語った。

 曹氏は先月、米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)で、かつてシンガポールの旅券(パスポート)を申請するため放棄した台湾籍を再び取得する意向を表明。祖国で死にたいからだと説明していた。(c)AFP/Amber WANG