【8月31日 AFP】旧ソ連最後の指導者、ミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)元大統領が30日、死去した。ゴルバチョフ氏の政権時代は、分かりやすいスローガンが多用された他、有名なフレーズも生まれた。

 最も有名なもの五つを紹介する。

■ペレストロイカ

 ゴルバチョフ氏のソ連の経済社会を近代化するという意欲を端的に表しているのが、変化や改革を意味する「ペレストロイカ」だ。

 ゴルバチョフ氏は1985年初めの演説で「同志よ、われわれが変わらなければいけないというのは明白だ。全員がだ」と訴えた。

 同氏はこの時、動詞としてペレストロイカを使ったが、行進のフォーメーションや車線変更を意味する言葉だった。名詞としては、建物の再建を表す際にも使われる。

 ペレストロイカは広く使われるようになり、ゴルバチョフ政権を象徴するスローガンとなった。

■グラスノスチ

 グラスノスチは、議論のテーマにするために情報公開することを意味する。もともとは、帝政ロシア時代に改革について使われた言葉だった。

 ゴルバチョフ氏がグラスノスチに最初に言及したのは1986年2月で、当初は市民が国家や共産党組織を批判できることを指していた。

 だが、グラスノスチは後に、当局による検閲と外国のラジオ放送の遮断の終了や、禁書の発行許可なども意味するようになった。

■セックスしない

 1986年、米国の人気トークショーでのソ連女性の発言が歴史に刻まれた。上品ぶった、世間知らずな態度が、ソ連を良く表していると思われたからだった。

 フィル・ドナヒュー(Phil Donahue)氏とウラジーミル・ポズナー(Vladimir Pozner)氏が司会を務めるこのショーは米ソ両国で放映された。

 番組内で米国人女性が、全員女性だったロシア人観覧客に向かってこう尋ねた。「私たちの国ではコマーシャルとセックスは大いに関係しています。あなたたちの国にもテレビコマーシャルはありますか?」

 これに対し、レニングラード(Leningrad)から来たリュドミラ・イワノワさんは、「私たちはセックスをしません。断固として反対しています」と答えた。

 すると別の女性が「私たちだってセックスはします。ないのはコマーシャルです!」と叫んだ。

 イワノワさんは2010年に英紙メトロ(Metro)に対し、「私たちにあるのは愛です」と続けて発言したものの、放送ではカットされていたと話した。

■ゴルビー

 ゴルバチョフ氏はロシアでは通常「ミハイル・セルゲーエビッチ(Mikhail Sergeyevich)」とファーストネームと父称で呼ばれている。しかし、西側メディアは1980年代中ごろから、ゴルバチョフを縮めて「ゴルビー(Gorby)」と呼び始め、同氏の人気ぶりを「ゴルビーマニア」と表した。

■反アルコール

 最も不評だったのは反アルコール政策だ。1985年に、過度の飲酒が経済活動に影響しているとして、飲酒を控えるよう求める決議が採択された。反アルコール運動のスローガンは「節酒が普通の生活」だった。

 アルコール飲料が入手しにくくなるように、店頭での販売時間を制限するよう命じたため、店には長蛇の列ができた。

 国内の多数のブドウ畑の廃止も命じた。合法的だった酒造業界が大きな打撃を受け、人々は密造酒を作るようになった。反アルコール運動は最終的に撤回された。(c)AFP