【9月4日 AFP】フランスは今年、記録的な猛暑や干ばつに見舞われており、雪を頂くアルプス(Alps)の山麓にあるサボワ(Savoy)県の雄大な牧草地も例外ではない。牛たちは、ルブロションなど名高いチーズの原料となる乳を生み出すのに必要な量の牧草を見つけるのに苦労している。

「すべてが黄色になり、からからに乾いてしまった。1か月も早く牛たちを牧草地から下ろさなければならない」。テオ・バルジェツィさん(28)は、牛の首に着けた鈴が鳴り響く標高約1600メートルの牧草地で話した。

 涼しさを求める観光客が今夏、アルプス地方に押し寄せた。生乳から生産されるルブロションやその他の手作りチーズを直接、地元の生産者から購入するのは、観光客のとっておきの楽しみだ。

 ラクリュサ(La Clusaz)の街を見下ろすバルジェツィさんの牧場に向かった観光客の中には、手ぶらで帰らざるを得ない人もいる。牛は、例年通りの量の青草(あおくさ)をはむことができず、結果的に乳は濃厚さに欠けるためだ。

 7月のフランスは、1961年以来最も乾燥した月となった。熱波により、ラクリュサ近くでも数日間にわたって気温が30度を超えた。急斜面が広がる高地では、かつてなかったことだ。

 ルブロションは、オレンジがかった黄色の外皮ができるまで木の板の上でじっくりと熟成される。バルジェツィさんは、固めた牛乳を円盤形に成形しながら、「1日に1頭の牛から1個分のルブロションを失っており、1週間では300個も減る計算だ」と説明した。

 フランスの食品品質当局である国立原産地・品質研究所(INAO)が定めた基準に沿って、約450グラムのルブロション1個を作るには、4リットルの生乳を必要とする。

「購入したい観光客が大勢いるのに、全ての人が購入できるだけの量はない。売り切れになり、訪ねてくる人全員に販売できないのは非常に残念だ」