【9月11日 AFP】スーダンの少数民族ハダリア(Hadaria)の女性、ホロウド・マサエドさんは、かつて一般的に行われていた古い習慣に従って、鋭い刃物で顔に傷をつけられた日のことを今でも鮮明に覚えている。

 80代になったマサエドさんの両頬には今も3本の傷跡が残る。年月を経て、傷の色は濃くなった。

 首都ハルツームから南に約66キロ離れたオムマガド(Om Maghad)でAFPの取材に応えたマサエドさんは、子どもの頃、施術者の男性の元に連れて行かれたと語った。

「その人は小さな刃物を使った」「7歳だった私は泣いた。美しさの象徴だから顔に傷をつけなければならないと言われた」

 スーダンでは、肌に傷をつける風習が古くからあり、かつては一般的だった。主に、所属部族を表したり、魅力的に見せたりするのが目的だった。

 近年、顔に傷をつける人は少なくなった。非衛生で、古臭く、時代遅れだと考える人も多い。

 マサエドさんは「昔はみんな、傷をほめていた」「とても価値があると思われていた」と語る。

 だが、マサエドさんは長年、自分の顔の傷を受け入れられずに苦しんだ。今はこの風習が廃れつつあることを喜んでいる。子どもには適齢期になった時に自分と同じ苦しみを味わわせたくなかったため、傷を入れなかった。

「顔に傷があるのは年寄りだけだ。若い世代はない」

 少数民族ジャアイリーン(Ja’aileen)のファトマ・アフメドさんの顔にも、マサエドさんと同じような傷がある。

 傷を入れた時は何週間も痛みに苦しんだ。痛みを和らげるため、何種類もの伝統薬を塗った。

 男性にも顔に傷がある人は多い。

 少数民族マハス(Mahas)のバビケル・モハメドさん(72)によると、男性の場合は「T」や「H」の文字に似た、縦線と横線を組み合わせた模様を小さくつけることが多い。

「あの当時、選択肢はなかった。避けられないものだった」と語った。「施術者のところに子どもを連れて行ったものだ。部族に合った傷をつけた」

 モハメドさんも自分の子どもには傷を入れさせなかった。「多分、私が(スーダンで)顔に傷を入れた最後の世代だろう」

 ジャアイリーンのイドリス・ムーサ・アブデルラーマンさんはこの風習が二度と復活しないことを願っている。「理由もなく人を傷つけているだけだ」 (c)AFP