■略奪

 国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)によると、侵攻開始以降、ウクライナでは175の文化財や施設などが破壊された。

 ウクライナの文化情報省は、ロシア占領地内には100軒の博物館と1万7000の文化財があると推定している。

 ホルティツァ島から約60キロ離れたワシリウカ(Vasylivka)は、侵攻初期にロシア軍に占領された。

 ワシリウカに立つ19世紀のネオ・ゴシック様式の豪邸「ポポウ(Popov)邸」は博物館として使われている。ここも3月初旬に砲撃により損傷した。

 博物館のスタッフには、占領後も町にとどまることを決めた人もいる。

 アンナ・ホロウコ館長(39)は「スタッフは建物を保護するためにあらゆる手を尽くしているが簡単ではない。窓をふさいだ先から、砲撃で吹き飛ばされてしまう」と話した。

 ポポフ邸のスタッフには、収蔵品を移送する時間はなかった。ホロウコ館長によると、町が陥落した次の日には、ロシア軍がポポフ邸に略奪に来た。

 今月初旬には、スタッフ2人が4日間にわたり拘束され、収蔵品の在りかを問いただされたという。

 一方、ホルティツァ島のチェルヒクさんにとって、特に占領地にあるウクライナの文化財の行く末は「つらく、常に頭から離れない」問題だ。

「私たちの文化財を守らなければ、ウクライナの勝利には何の価値もない」と訴えた。(c)AFP/Marina MOYSEYENKO with Anna KORIAGINA in Kyiv