【8月23日 東方新報】中国で高齢者を狙った詐欺事件が増えている。北京市の裁判所は、15件の詐欺事件で計100人の被告に懲役刑や罰金を言い渡し、その手口を公開した。

 まずは「代行販売詐欺」。詐欺グループが高齢者に電話をかけ、「あなたが持っている収蔵品を代わりに販売する」と勧誘。北京市内のオフィスビルに事務所を借りて、高齢者を招待してその仕事ぶりを見せる。「鑑定人」や「競売担当」役の社員も用意し、用意周到に相手を信用させる。最初は会員費や代行費用の名目で現金を求め、その後に「会社に投資をすれば配当もある」と大口の出資を持ち掛け、最終的に現金をだまし取る。

 被害者は約160人に及び、このうち約140人が60歳以上。被害総額は約2400万元(約4億8000万円)に上る。自宅を抵当に入れて借金をして出資し、だまされた末に自宅を失った人もいるという。

 次に「広場舞詐欺」。中国各地の公園や広場では、夜な夜な高齢者が大音量の音楽を流し、集団でダンスをする「広場舞」が行われている。詐欺グループはスマートフォンに「広場舞アプリ」を製作。ダンスレッスンや広場舞が行われる場所の情報などを提供しながら、「元本保証。年利8~14%の理財商品」というウソの投資話をアプリに表示した。北京市海淀区(Haiding)で約60人の高齢者から金を集め、その後連絡を絶った。

 このグループは2015年から同様の手口を繰り返し、約1200人から総額8億8000万元(約177億円)をだまし取ったとみられる。

 このほか、貸しスペースで無料の医療相談会を開き、ニセ医師が健康食品を売り付ける詐欺もあれば、「今の貯金では老後の生活に足りない。自宅を抵当に入れて投資をすると資産が増える」と勧誘し、資金を持ち逃げする詐欺もある。

 北京市の裁判所は15件の事件で、100人の被告に対し有罪判決を言い渡した。内訳は、1人が無期懲役、7人が懲役10年以上、56人が懲役3~10年で、その他は3年以下の懲役か罰金の判決だった。

 中国メディアは「高齢者の不安をあおり、デジタルディバイド(情報格差)を悪用した詐欺は、今後も増え続けるとみられる。詐欺グループの摘発と高齢者への啓発を強化する必要がある」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News