【6月23日 東方新報】「アプリをダウンロードして、動画を見るだけでお金を稼げます」「アプリに登録すれば、歩くだけで電子マネーがもらえます」。中国では最近、スマートフォンのアプリを使ったこんな広告が増えている。

 50代で定年を迎えた広州市(Guangzhou)の女性、張蘭(Zhang Lan)さんは「CMを見るだけで10元(約201円)もらえる」というアプリをダウンロードした。実際に30秒のCMを見たが、送られてきた電子マネーはわずか0.02元(約0.4円)。しかも「引き出しは10元単位」とされており、最低でも500回広告を見なければならなかった。

 張さんは「ばかばかしい」とアプリを使うのをやめたが、それから「投資でもうけよう」「あなただけにビジネスチャンス」といった勧誘メッセージがスマホに届くようになった。例のアプリで「お金を受け取るために必要」と名前や年齢、住所、電話番号などを登録しており、張さんは「個人情報が悪用されている」と憤慨している。

 インターネットで「金を稼ぐアプリ」と検索すると、「ゲームをするだけでお金がもうかる」「小説を読んだら電子マネーをプレゼント」といった宣伝が次々と登場する。「横になってスマホをいじっていたら、大金ゲットしちゃいました」というような「成功」体験コメントもある。

 キャッシュレス社会の中国では、紅包(お年玉)を電子マネーで送ったり、IT企業が「先着1万人に電子マネープレゼント」というキャンペーンをしたりすることが普通になっている。ちょっとしたお祝い事があった人が友人同士のグループチャットに「総額100元(約2017円)プレゼント」と投稿し、他の人がそれをクリックすると1元(約20円)や10元がランダムに当たるというゲーム的な電子マネーのやりとりも定着している。そのため「アプリを入れるだけでお金がもらえる」という勧誘に抵抗をあまり感じない市民も少なくない。

 ただ、「金もうけアプリ」はたいてい、実際に使ってみるとすぐにお金が手に入らない仕組みになっている。中国メディアは「こうしたアプリの狙いは個人情報の収集だ。データを業者に売買するほか、詐欺のターゲット探しに使われる恐れがある」と指摘している。

 デジタルネーティブの若者は甘い勧誘のアプリに引っ掛かることは少ないが、定年後に時間を持て余し、インターネットへの警戒心が低い高年齢層が被害に遭いやすい傾向だ。華東政法大学(East China University of Political Science and Law)経済法学院の任超(Ren Chao)教授は「金もうけアプリは合理的な理由もなく個人情報を過度に収集しており、法律に違反している疑いがある」と指摘。消費者を守るためのルール作りや悪質業者の摘発が必要としている。(c)東方新報/AFPBB News