【8月20日 AFP】インドで今週、独立後最悪の宗教暴動でイスラム教徒の女性を集団レイプし、終身刑を科されたヒンズー教徒11人が早期釈放されたことを受け、被害者のビルキス・バノ(Bilkis Bano)さんは「あぜんとしている」と心境を明らかにした。

 西部グジャラート(Gujarat)州で2002年、ヒンズー教徒の暴徒にイスラム教徒17人が襲われ、14人が死亡する事件があり、世界的な非難を浴びた。生き残ったのは妊娠中だったバノさんとその子ども2人のみ。バノさんは3歳の娘を含む親族7人を亡くした。

 その後、ヒンズー教徒の男11人が終身刑を言い渡されたが、グジャラート州政府は15日、インド独立75周年の式典に合わせて釈放すると発表した。

 バノさんは17日、弁護士を通じて出した声明で「言葉を失っている。今もあぜんとしている」「私はこの国の最高裁を信頼していた。司法制度を信頼していた」と語った。

「受刑者らが釈放されたことで、私の平穏は奪われ、司法への信頼も揺らいでいる。私の悲しみと揺らいでいる信頼は、私だけではなく、裁判で正義を求めて闘っているすべての女性のものでもある」

 事件当時、ヒンズー至上主義を掲げるナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相がグジャラート州首相を務めていた。宗教暴動を見て見ぬふりをしたと非難されたが、2012年に非はなかったとされた。

 しかし今回の一件を受け、イスラム教徒の有力議員アサドゥディン・オワイシ(Asaduddin Owaisi)氏はモディ氏率いる与党インド人民党(BJP)に言及し、「BJPの宗教に対する偏向は、残忍なレイプや憎悪犯罪さえも容認するほどだ」と非難した。

 BJPが与党となっているグジャラート州政府は、11人の釈放を擁護。主要紙ヒンドゥスタン・タイムズ(Hindustan Times)によると、高官のラジ・クマール(Raj Kumar)氏は「11人の減刑は、インドで通常14年以上とされる終身刑の刑期、年齢、素行など、さまざまな要因を考慮したものだ」と説明した。

 2002年の宗教暴動は、ヒンズー教の巡礼者59人が死亡した列車火災をきっかけに発生。公式発表によると、イスラム教徒を中心に約1000人が殺害された。

 列車火災をめぐってはイスラム教徒が原因とされ、後に30人以上が有罪判決を受けたが、今も原因をめぐる論争が続いている。(c)AFP