【8月19日 AFP】英イングランド南西部ブリストル(Bristol)にあるベジタリアンレストラン「ザ・カンティーン(The Canteen)」では、メニューに料理の二酸化炭素(CO2)排出量を表示している。客は料理ごとに、素材の調達から廃棄・リサイクルに至るまでの総排出量を確認できるのだ。

 例えば「ニンジンとビーツのパコラ(南アジアの揚げ物料理)ヨーグルトソース添え」の排出量は16グラム。「ナスのみそハリッサソースあえ、タブーラ(パセリのサラダ)とザータルトースト添え」では675グラムとなっている。

 店が提供していない料理との比較も示されている。それによるとビーフハンバーガーの排出量は、肉を使わないビーガンバーガーの10倍だ。

 テラス席でビールを飲んでいた男性客(37)が驚きの声を上げた。「(ビーフ)ハンバーガー(の排出量)は3キロだって。信じられない」

 各国が世界の気温上昇を産業革命前の水準に比べて1.5度に抑え、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標の達成に躍起になる中、企業や消費者が排出するCO2に厳しい目が向けられている。

 英政府統計によると、平均的な英国人が1年間に排出するCO2は10トン以上。英国は、気候変動に関する国際的な公約を果たすため、2035年までに排出量を1990年比で78%削減するという野心的な目標を掲げている。

 ザ・カンティーンが英国で初めて、メニューへの排出量表示を始めたのは7月。菜食主義を推進する慈善団体「ビバ!(Viva!)」のキャンペーンに賛同したからだ。マネジャーのリアム・ストック氏は、「自分たちの行動を確認し、理解し、改善する」ための手段になると説明した。

■「気候非常事態」

 国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の専門家は4月、植物性の食生活への切り替えは個人の排出量を削減する最も効果的な方法の一つだとの見解を示した。

 畜産業ではCO2を吸収する森林を伐採し、放牧地や、飼料用大豆の耕作地へと転換してしまう。家畜もまた、温室効果ガスの一種であるメタンガスを大量に排出する。

 レストランで料理ごとの排出量を客に提示することが注文にどう影響するかはまだ分からないが、革新的なメニュー表示は人々の関心と支持を集めているとストック氏は話す。「イングランドでは、大手レストランチェーンに(メニューへの)カロリー表示が法律で義務付けられている。でも、それよりもCO2排出量を知りたいという人が多い」

 ただ、前出の男性客は、ビーフハンバーガーと他の料理の排出量に「大きな」差があることを認めた上で、注文した料理のカロリー量やCO2排出量に必ずしも煩わされたくはないと語った。「外食する時は楽しむことを優先したい」

 これに対し、「ビバ!」のキャンペーン責任者ローラ・ヘルウィグ(Laura Hellwig)氏は、CO2排出量の表示は義務にすべきだと主張する。「私たちは気候非常事態に直面しており、消費者は十分な情報に基づいて選択できなければならない」

 肉料理とビーガン料理の排出量比較を見れば「ほとんどの人は実際に地球のための選択をするだろう」と話した。

■「ゆりかごから店まで」

 ストック氏によれば、ザ・カンティーンの食材は地産地消が中心で、料理のCO2排出量が低いのは予想通りだったが、輸入香辛料が排出量を押し上げる要因になっているなど、意外な発見も幾つかあった。

 排出量については、レシピや食材調達先の情報を「マイ・エミッションズ(My Emissions)」という専門会社に送り、生産から加工、輸送、包装に至るまでの総量を算出してもらっている。「ゆりかごから店まで」のCO2総排出量ということになる。

 ザ・カンティーンで食事をしていた男性(43)は、「二つの料理のどちらかを選ぶ場合、空腹の度合いにもよるが、排出量が小さいものを選ぶかもしれない」と語った。(c)AFP/Valentine GRAVELEAU