【8月11日 AFP】中国政府が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として承認した伝統薬に疑義を呈した医療情報ポータルサイト「DXY」が、「関連法規に違反した」として当局の検閲を受けている。

 中国IT大手の騰訊控股(テンセント、Tencent)が出資するDXYは数か月前、発熱や喉の痛みに効くとうたって発売されている伝統薬「連花清瘟(Lianhua Qingwen)」について、新型コロナ治療における効果を疑問視する記事を掲載。これをきっかけとする一連の報道により、製造元の中国製薬大手の株価は急落した。

 中国政府は、金銀花(スイカズラ)や杏仁(アンズの種)などの生薬を含有する「連花清瘟」を、2020年に新型コロナ治療薬として承認。今年、上海で感染が拡大した際には住民に配布していた。

「連花清瘟」に関するDXYの記事は、すでにサイト上から削除されている。

 DXYは現在、少なくとも5個のソーシャルメディア「微博(ウェイボー、Weibo)」のアカウントで投稿を禁止されている。公式サイトの上部には「関連法規に違反したため、このユーザーは投稿を禁止されています」との通知が掲載されている。

 通常は毎日複数の医療関連記事を掲載しているチャットアプリの微信(WeChat、ウィーチャット)の公式アカウントも、8日から更新されていない。

 中国政府は近年、国内外で中国伝統薬のアピールに力を入れているが、しばしば国粋主義的な色合いを帯びる。DXYの記事は、西洋の医薬品を宣伝する目的で中国伝統薬を標的にしているとの批判を招いた。

 一部の微博ユーザーは、今回のアカウント凍結を称賛。DXYは「反中国勢力」と結託して虚偽情報をばらまいていると非難している。

 一方、誤った情報が排除されている貴重な医療情報サイトが失われたことを嘆き、検閲に抗議している人もいる。あるユーザーは、「私の母は熱を出した子どもに鶏の胆のうを食べさせるような人だった」と投稿し、DXYのおかげで最新の医療情報を得られるようになったと訴えた。

 米国をはじめとする各国は、「連花清瘟」に新型コロナ感染予防や治療の効果があるという「信頼できる科学的根拠の裏付けはない」として、警鐘を鳴らしている。(c)AFP