【8月11日 People’s Daily】スマートフォンを取り出し、「生物記」というアプリを起動すると、野外調査員が素早く生物種を特定し、その時刻や場所、環境情報などを記録することができた。

「生物記」アプリの開発者である中国科学院(CAS)動物研究所の林聡田(Lin Congtian)博士は、生物多様性情報学の研究に従事し、ビッグデータと人工知能(AI)技術の生物多様性調査への応用に取り組んでいる。生物多様性の保全には、生物資源のバックグラウンドを理解することが必須条件だと、林博士は述べた。

 このほど、「中国生物種リスト」2022年版がオンラインで公開された。2008年に初版が発表された時点で、4万4000種以上の生物が記録された。今回の更新では、12万5000種が収録され、中国の生物多様性研究と保全の取り組みに新たな一歩を踏み出したことを示している。

 生物種の認識のみならず、その分布を調べたり、移動を追跡したりすることも、生物多様性を理解するための「必修科目」だ。中国科学院の「地球ビッグデータ科学プロジェクト」の支援のもと、約5万種、400万件以上の分布データを統合した中国生物地図が作成されている。このデータマップでは、動物、植物、微生物の主要な分類群の分布域が明確に示され、主要種の保全活動の強力な支えとなっている。

 2021年11月、丸くて元気いっぱいの野生のジャイアントパンダの姿が、四川省(Sichuan)都江堰市(Dujiangyan)の国有営林場に設置された赤外線カメラで記録された。この「国宝」は、3年前に中国ジャイアントパンダ保護研究センターから野生に戻された「クルミちゃん」と専門家によって特定された。その出現は、エキサイティングな「無事報告」だと言える。中国のジャイアントパンダの野生個体数は、40年間で67%増となり、1864頭に達した。

「パンダの生息地には、8000種以上の野生動植物が生息している」。中国科学院動物研究所の胡義波(Hu Yibo)研究員の紹介によると、パンダのような旗艦種を保護することで、「アンブレラ効果」が発揮され、生物多様性保全の効果を最大化することができる。ジャイアントパンダ国立公園の正式設立に伴い、パンダと同じ地域に共存するユキヒョウなどの肉食動物も頻繁に出現するようになったという。

 中国科学院生物多様性委員会の副主任兼事務総長で、中国科学院植物研究所の馬克平(Ma Keping)研究員の紹介によると、当初7羽だったトキが、現在少なくとも6000羽に増え、アジアゾウの野生個体数は1980年代の180頭から現在の約300頭に増え、チベットカモシカの野生個体数は30万頭以上に回復しているという。中国の主要野生動植物の保護率は74%に達しており、中国種の保護は世界全体より大幅に良好な傾向にあると指摘した。

 生物多様性が世界で最も豊かな国の一つとして、中国は包括的な生物多様性保全システムの構築に留まらず、国際協力も積極的に行っている。生物種リストなどの重要データを世界と共有しながら、「一帯一路(Belt and Road)」沿線国の生物資源の整理・統合を支援し、地球生命共同体の構築にポジティブエネルギーを注いでいる。

「将来的には、データの安全確保を前提に、より成熟した世界の生物多様性のデータ共有メカニズムを構築し、生物多様性資源がより多くの人々に恩恵をもたらすだろう」と、林博士は述べた。(c)People’s Daily/AFPBB News