【8月21日 AFP】タイ・バンコクのバイクタクシーの運転手がよく着ているオレンジ色のベストとヘルメットを着けて、レスラーがプロレスリングに飛び出した。リングネームは「ピー・スチャート」だ。

 タイのプロレス団体「セットアップ・タイランド・プロレスリング(SETUP Thailand Pro Wrestling)」には、こうしたレスラーが約20人所属している。披露しているのは、米国のプロレス団体WWE式のショープロレスだ。

 スポーツとショーを掛け合わせたWWE式プロレスは、タイで徐々に人気を集めている。「セットアップ」共同設立者のプーミ・ブンヤタットさん(32)は、タイらしさを備えた地元レスラーが活躍できる場を提供したいと考えている。

 その狙いが当たったのか、バンコクのリングには250人の観客が集まっていた。

「タイの格闘技をベースに(中略)プロレスラーのトレーニングを組み合わせています」とブンヤタットさん。目標は「真のタイ版レスリング」をつくり出すことだと言う。

 ピー・スチャート、本名タナポン・マハーウォンさん(25)がレスリングにはまったきっかけは、子どもの頃に遊んでいたビデオゲームだ。

 マハーウォンさんは「キャラクターづくりの方が、レスリングの技より重要です」と語る。

「レスリングの技はトレーニングで身に付くし、一生懸命やれば、いいレスラーになれます」

「でもキャラクター設定に成功するかどうかは全く別物です」

 マハーウォンさんが扮(ふん)する「バイクタクシー運転手」レスラーというキャラクターは、タイの映画『フリーランス(Freelance/Heart Attack)』の登場人物に着想を得たと言う。

 土曜の夜にリングに上がった多くのレスラー同様、マハーウォンさんがトレーニングに励み、試合に出るのは本業の合間だ。普段は編集者として働いている。

 本場米国から観光に訪れていたプロレスファンのジェリー・マッシーさん(45)はこの日、「セットアップ」のショーをたまたま見てファンになった。たたき付けられた椅子がばらばらになるなど派手なアクションを間近で体感できたと言い、「最高ですね」と語った。(c)AFP