【7月30日 東方新報】中国の通信行政を担う工業情報化部によると、中国の第5世代移動通信システム(5G)基地局は185万4000か所に達し、5Gネットワークは全国の市街地エリアの92%をカバーしている。5G対応スマートフォンの利用者数は4億2800万人に上り、5G通信量がモバイル通信量に占める割合は前年比19.1ポイント増の27.2%となった。同部情報通信管理局の王鵬(Wang Peng)氏は「各県に5Gが、各村にブロードバンドが行き渡った」と成果を誇る。中国の5G基地局の数は世界の70%を占め、今年末には200万か所に到達するという。

 5Gネットワークはすでに1000か所のスマート工場、600か所の三級甲等病院(最高レベルの病院)、200か所のスマート鉱山、180か所のスマートグリッド(次世代送電網)、90か所の港湾のプロジェクトで利用されている。

 地方や過疎地域で医療機関と医師が不足する中、5Gを導入した遠隔医療が実用化されることで、医師が離れた地域の患者の診察データを瞬時に入手して診察できるほか、手術支援ロボットの操作にタイムラグがなくなることで遠隔手術を行うことが可能となる。

 坑道作業に危険がつきまとう鉱山では、5Gを活用した無人採掘機やトロッコの自動運転が既に実現。5Gスマートグリッドでは、電力作業員が超高画質カメラを通じて送電線や配電施設の故障リスクを早期発見し、現場点検の人手を大幅に削減している。若者の少子化・高学歴化が進み、現場労働の従事者が減少している現状にも対応している。

 中国が世界に先駆けようとしている自動運転技術でも5Gは不可欠だ。高精度のデータ解析、リアルタイムの情報処理、そしてブレーキのタイミングが一瞬でもずれないようタイムラグが発生しない研究が進んでいる。

 5GはIoT(モノのインターネット)を促進し、市民の日常の暮らしにも恩恵を与える。照明やエアコン、洗濯機、家電などを高速通信でネットワーク接続し、生活を快適にするスマートホームが広まっている。交通、健康、教育、観光などあらゆる分野で5G技術の応用が進んでいる。情報・デジタル分野の専門家、袁師(Yuan Shi)氏は「5Gネットワークはほぼ全ての産業に変革をもたらす。4G技術は人のライフスタイルを変えたが、5G技術は社会そのものを変える」と話す。

 一方で課題もある。5Gネットワークは中国全土に網羅されつつあるが、「密度」は大きく異なる。5月末時点で1万人当たりの5G基地局数は12カ所を超えているが、5万4000か所の基地局を持つ北京市は1万人あたり25か所、上海市も20.8カ所と、全国平均を大きく上回る。中国人民大学(Renmin University of China)の王鵬(Wang Peng)准教授は「内陸の中西部地域では5Gのカバー率が低い。基地局の建設は地域間の不均衡があり、さらに最適化する必要がある」と指摘する。人、モノ、情報の地域格差を解消する役割が期待される5Gが、むしろ巨大な「ネットワーク格差」を生み出さないよう警鐘を鳴らしている。(c)東方新報/AFPBB News