【7月22日 東方新報】日中国交正常化から50年となる今年、両国とも長引くコロナ禍に苦しんでいるが、その対応には大きな違いがある。中国はトップダウンによる「ゼロコロナ政策」を堅持。日本は連日10万人超の新規陽性者を出しながらも、行動制限のない「ウィズコロナ政策」にかじを切っている。そんな中国の現状を「自由がない」と批判的な目で見る日本人もいれば、逆に日本の現状を「やり方がぬるい」と批判する中国人もいる。こうしたコロナ対応における両国の違いを日本の識者はどう見ているのか。

 第一次安倍内閣時代に財務副大臣を務め、現在はグローバルビジネス戦略総合研究所代表で、長年に渡り、日中の草の根交流に尽力してきた遠藤乙彦氏に話を聞いた。

「どちらが正しい、正しくない、という視点で見るべきではない。それぞれの国にはそれぞれの事情があり、環境の違いがある。だから自分たちの視点で一方的に相手を批判するのではなく、まずは相手の事情を知り、理解しようと努めることが大切かと思います」

 コロナ禍だけでなく、ウクライナ戦争の泥沼化、インフレ懸念、気象変動など、世界は今、大きな不安の中にある。国交正常化50周年を迎えた日中両国の関係も決して「良好」とは言えない状況にある。日中関係の今と今後を、遠藤氏はどう見ているのか。

「正直、非常に難しい状況にあると見ています。米国と中国が対立を深めていけばいくほど、米国の同盟国である日本の立ち位置が問われることになります。米国との同盟関係を堅持しながら、今や経済的に切っても切れぬ関係にある隣国・中国との関係をいかによりよいものにしていくことができるか。日本にとってこれは非常に難しい問題ですが、何としてもこれを成し遂げなければ日本に未来はないと思います」

 中国と米国という「二大強国」の狭間で、いかにバランスを取りながら日本の国益を守っていくことができるか。それが喫緊の課題だと言うが、政府同士のやり取りだけでは限界があるとも遠藤氏は語る。

「国家と国家の関係は国益がぶつかり合うので、どうしても波風が立つ。しかし、これは私の信念でもありますが、どんな状況になろうが、人と人との交流をしっかりと続け、相互理解を深めていけば、いずれは国家の関係も変えていくだけの力になるということです。それにはこれまでの表面的な交流からの脱却が必要。お互いの本当に切実なニーズを見据え、ウインウインになるような具体的な交流プロジェクトを模索していくべきです。たとえば日本は少子高齢化で年々若年層が減少している。中国は就職難もあって、優秀な若年の人材が行き場をなくしている面がある。これをうまくマッチングすれば、日中ウインウインの人材交流が可能になるはずです」

 日中関係の未来はけっして暗くない。(c)東方新報/根本直樹