【7月21日 東方新報】中国の都市部では一般的に水道水を飲まず、大半の家庭は自宅に飲料水サーバーを設置している。街の売店やコンビニではペットボトル入りミネラルウオーターが数多く売られている。最近は特定の効能をアピールするタイプも増えたが、専門家は疑問視している。

 ボトルウオーターは、ハイエンドの天然鉱泉水を使ったブランド「崑崙山」「西蔵(チベット)5100」などが500ミリリットルで5元(約102円)程度、大衆向けの「農夫山泉(Nongfu Spring)」は3元(約61円)程度など、種類によって価格も異なる。「農夫山泉」の粗利益率は60%近く、純利益率も23%と高い。「西蔵5100」の粗利益率はピーク時には80%を超えていた。優良な採水地を確保すればランニングコストはそれほど高くないため、安定した利益が得られる仕組みだ。

 米経済誌フォーブス(Forbes)の2022年版世界長者番付によると、「農夫山泉」の創業者、鍾睒睒(Zhong Shanshan)氏の資産額は657億ドル(約9兆1001億円)で中国勢トップ、世界でも17位の資産家となっている。

 中国は広大な面積と人口に比べて水資源が乏しい。水利省によると、中国の1人あたりの水資源は2200立方メートルで世界平均の4分の1にすぎない。都市化や工業化が進み、地下水の汚染も心配されている。一方で市民の所得水準が向上すると同時に健康志向も強まっており、より安全なミネラルウオーターを求める意識は高まっている。

 近年は「富気水(高濃度酸素水)」「嬰児水(赤ちゃん専用水)」「酵素スパーリング水」などの機能性をうたって1本8元(約163円)程度するボトルウオーターが出回っている。高濃度酸素水は「通常の数倍の酸素を含んでおり、血流が良くなり、疲労回復効果もある」とPR。赤ちゃん専用水は「滅菌、低ミネラルなので安心」と強調し、酵素スパークリング水は「腸の機能を整え、ダイエットや睡眠の質を上げる効果がある」「老化を防ぐ」などと宣伝している。

 だが、天津科技大学(Tianjin University of Science & Technology)の梅楨(Mei Zhen)講師は高濃度酸素水について「飲料水で人体に酸素を供給することはできない」と断じる。赤ちゃん専用水も天津美中宜和婦人児童病院の陳雅琴(Chen Yaqin)医師は「乳幼児に特別な水を与える必要はない。滅菌した水を飲ませたければ、普通の水を沸騰させるだけでいい」と指摘。酵素スパーリング水も、通常の水と大差はないといわれる。

 ただ、専門家が効能を否定しても、こうした商品は「言ったもの勝ち」のように出回っている。ボトルウオーター市場は今後も成長する一方と予想されており、消費者権益保護法や広告法の観点から規制を強化すべきだと議論されている。(c)東方新報/AFPBB News