【7月25日 AFP】ロシア人女性は、美容のこととなるとちょっとした美容整形手術にも金を惜しまない。

 だが、ロシアのウクライナ侵攻による西側諸国の経済制裁により、米国やドイツからの輸入に頼っていたボトックスや豊胸バッグなどが手に入りにくくなっている。

 アナスタシア・エルマコワさん(37)が、顔のしわを取るためにボトックス注射を受けたのは2月が最後だった。「担当医はまだボトックスの在庫があるから安心するよう言うが心配だ」と話した。国産の類似品は質が良くないという。

 国際美容外科学会(ISAPS)によると、ロシアは世界で9番目に美容整形外科手術の件数が多く、2020年は62万1600件に上った。

 ロシアのコンサルタント企業アミコ(Amiko)は、国内美容医療市場は2021年には9億6900万ドル(約1340億円)規模だったとしている。

 ボトックスを製造する米製薬会社アッヴィ(AbbVie)は、ウクライナ開始直後、大きな市場となっていたロシアから撤退した。

 ロシア第2の都市サンクトペテルブルク(St. Petersburg)で美容クリニック「グランドメド(Grandmed)」を経営するオクサーナ・ウラソワ氏は「3月には患者や医師、サプライヤーがパニックになった」と話した。「需要が爆発的に伸び、ボトックスの在庫が見る見るうちに減っていった」

 ロシアの医薬品市場を分析するRNCファーマ(RNC Pharma)のニコライ・ベスパロフ氏によると、4~5月のボトックスの輸入はゼロだった。夏の終わり頃には供給が再開すると期待している。

 欧米製の充填(じゅうてん)剤(フィラー)も在庫が尽き始めている。ロシアで人気の高い、唇をふっくらさせるのに使われる注射用のヒアルロン酸が特に少なくなっている。

 グランドメドのウラソワ氏は、アッヴィ製フィラーとは「お別れせざるを得なかった」と話す。欧州メーカーの代替品が入ることを期待している。