【7月25日 AFP】天の川銀河(銀河系、Milky Way)の近傍銀河で、恒星と連星系を形成している「休眠状態」の恒星質量ブラックホールを初めて発見したと、天体物理学者チームが先週発表した。

【写真】観測・研究で見えてきたブラックホールの姿

 英科学誌ネイチャー・アストロノミー(Nature Astronomy)に掲載された最新論文の筆頭執筆者で、オランダ・アムステルダム大学(University of Amsterdam)の天体物理学者トメル・シェナー(Tomer Shenar)氏は、「太陽の25倍の質量を持つ大質量星が、見えない何かの周りを回っているのを発見した」とAFPの取材に語った。

 天の川銀河の伴銀河、大マゼラン雲(Large Magellanic Cloud)にあるこの青色巨星は、太陽の9倍の質量を持つブラックホールとの「死のダンス」に巻き込まれていると研究チームは考えている。

 この種のブラックホールは通常、連星系の伴星から物質を取り込む際に発するX線放射によって検出される。

 だが、この連星系「VFTS 243」は、X線を発していないため、休眠状態にあるとみられる。伴星の物質を取り込めるほど近い距離にはないのだ。

 論文の共同執筆者で、ベルギー・ルーベンカトリック大学(KU Leuven university)の天体物理学者ユーグ・サナ(Hugues Sana)氏は、超大質量ブラックホールに比べてはるかに小さい恒星質量ブラックホールは、天の川銀河内だけでも約1億個存在すると考えられていると説明する。

 ただその一方で、これまでに見つかっている恒星質量ブラックホールは10個しかないとも指摘した。これは、その多くが伴星をのみ込むチャンスが訪れるのを待ちながら、休眠状態にあるからなのかもしれない。

 休眠ブラックホールの観測は、白い服を着た人と黒い服を着た人が暗室の中でダンスをするのを見るようなものだと、サナ氏は表現する。白い服を着た人が踊るのが見えるだけで、もう一人の存在が分かる仕掛けだ。(c)AFP/Daniel Lawler and Juliette Collen