【7月16日 AFP】ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領は15日、サウジアラビアを訪問し、同国の事実上の最高指導者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)と会談した。バイデン氏は大統領選に出馬時、人権問題をめぐりサウジを国際社会の「のけ者」にすると表明していたが、今回の訪問は方針転換となった。

 バイデン氏は、先に訪れていたイスラエルから大統領専用機エアフォースワン(Air Force One)で出発し、サウジの港湾都市ジッダ(Jeddah)に到着。イスラエルを国家として承認していないアラブ国家へ同国から直行した米大統領は、バイデン氏が初めて。

 国営テレビのアルイフバリヤ(Al-Ekhbariya)は、ムハンマド皇太子がジッダのアルサラム(Al-Salam)宮殿にバイデン氏を迎え、こぶしを突き合わせてあいさつした後、宮殿内を案内する様子を放送。バイデン氏はサルマン国王(King Salman、86)と面会した後、ムハンマド皇太子を含む両国高官と共に大きなテーブルを囲んで協議を行った。

 サウジアラビアをめぐっては2018年、同国の反体制派ジャーナリスト、ジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏がトルコ・イスタンブールのサウジ領事館で殺害され、国際社会からの批判を生んだ。バイデン政権は昨年の発足後、ムハンマド皇太子がカショギ氏の殺害を「承認」したと結論付けた米情報機関の調査結果を発表していた。

 サウジ当局は皇太子の関与を否定し、カショギ氏殺害は上層部の指示なく実行されたものだったと説明。だが、改革者と期待されていた皇太子の国際的評判は、この事件によって大きく傷ついた。

 バイデン氏はムハンマド皇太子と会談後に単独で開いた記者会見で、カショギ氏殺害事件を非難し、今後同様の問題が起きた場合には厳しい措置を取ると皇太子に警告したと説明。ただ、具体的な措置の内容には触れなかった。

 サウジは米国にとって数十年来の重要な戦略的同盟国で、主要産油国かつ、米製武器の大口輸入国でもある。米政府は、11月の中間選挙で与党・民主党の機運を損なっているガソリン価格の高騰やインフレ高進の抑制に向け、世界最大の原油輸出国であるサウジによる原油増産を要望しており、バイデン氏はこれまでの姿勢を転換して両国間の関係を強化する意向のようだ。(c)AFP/Aurélia End and Robbie Corey-Boulet