【2月27日 AFP】(更新)2018年にサウジアラビア人ジャーナリストのジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏が殺害された事件で、米情報機関は26日、サウジの事実上の支配者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)が殺害を「承認した」とする報告書を公表した。米政府は一連の制裁措置を発表したが、皇太子本人は直接の対象に含めなかった。

 報告書は、ムハンマド皇太子の影響力を考慮すれば、その許可なくしてカショギ氏殺害が実行された可能性は「極めて低い」と指摘。殺害方法も「暴力的な手段を通じて国外の反体制派を黙らせることを皇太子が支持してきた」ことに合致しているとした。サウジアラビア外務省はこれを受け声明を出し、「否定的で虚偽かつ容認できない報告書の内容を完全に拒絶する」と反発した。

 カショギ氏は2018年10月、トルコ・イスタンブールのサウジ総領事館に呼び出された上で殺害され、遺体はバラバラに切断された。カショギ氏はムハンマド皇太子に批判的な姿勢で知られ、米国に居住しながら米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)に寄稿していた。

 米財務省はサウジの元情報当局者1人と精鋭部隊「迅速介入部隊(Rapid Intervention Force)」を対象に、資産凍結や取引禁止の制裁を科すと発表。報告書は同部隊について、「皇太子警護のために存在」し、「皇太子の命令のみに従う」組織だとしている。

 ただ米国は、皇太子に対する直接の措置には至らなかった。皇太子はカショギ氏殺害について、広い意味でのサウジアラビアの責任は認めつつも、個人的な関与は否定している。

 アントニー・ブリンケン(Antony Blinken)米国務長官は同時に、今後制定する「カショギ法」の下で、反体制派を弾圧したり、記者やその家族を抑圧したりした外国人の入国を禁止すると発表した。

 報告書はドナルド・トランプ(Donald Trump)前政権下でまとめられたが、トランプ氏はサウジアラビアが米国製武器の大口受注先であることや、ともにイランと敵対する国同士という関係から、サウジとの協働を宣言。ジョー・バイデン(Joe Biden)現大統領はこの方針を転換し、報告書の公開を決めていた。(c)AFP/Sebastian Smith and Shaun Tandon