【7月12日 東方新報】中国が夏の旅行シーズンを迎え、各地でにぎわいを見せている。新型コロナウイルス関連の規制が緩和され、各自治体は冷え込んだ消費の促進策として観光客の受け入れに懸命となっている。

 中国は新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「動態清零」(ダイナミック・ゼロコロナ)政策を続けている。これまではある省で感染リスクが高・中程度の地区が発生すると省内全域の団体旅行が中止とされていたが、文化観光省は5月末に新たなガイドラインを発表。ある県(中国では「市」の下部に「県」がある)で感染リスクが高・中程度の地区が発生した場合、その県に限って省外への団体旅行を中止すると、制限エリアを縮小した。

 大手旅行サイト「去哪儿(Qunar)」のマーケティング担当・黄小傑(Huang Xiaojie)さんは「6月以降、ホテルや航空券、列車、観光地チケットの予約が大幅に増えている。省をまたぐ旅行も活発になっている」と説明する。

 中国では6月上旬に高考(大学統一入試)、6月下旬に中考(高校統一入試)が行われ、その後から卒業旅行や家族旅行が本格化する。7月1日から8月31日までの鉄道利用者は延べ5億2000万人に達する見込み。コロナ禍以前の2019年夏の延べ7億3500万人には届かないが、昨年夏の延べ4億6200万人は上回る見通しだ。

 福建省(Fujian)武夷山市(Wuyishan)は6月18日から12月31日まで、世界遺産の景勝地・武夷山主景区の入場料を無料にすると発表。観光客を招き入れて宿泊産業や外食産業などを潤わせる「損して得とれ」商法だ。貴州省(Guizhou)にある東アジア最大級の滝・黄果樹(ばくふ)瀑布や、北朝鮮との国境にある吉林省(Jilin)の長白山なども入場を無料とし、全国の観光地が「無料競争」に躍起となっている。大手旅行サイトの同程研究院の程超(Cheng Chao)首席研究員は「こうした施策は、コロナ禍で抑制された市民の消費意欲を刺激している」と効果を認める。

 最近は団体旅行以外に家族や友人同士の旅行が増えているため、旅行会社は砂漠ツアー、星空観察、博物館巡りなど、親子らをターゲットにしたスタディーツアー商品を開発。学生向けに大自然でのごみ拾いや壁画の修復の手伝いといったボランティア活動付き旅行パックも企画している。コロナ禍で打撃を受けた観光業界が復活を果たすため多くのニーズを取り込もうとしている。(c)東方新報/AFPBB News