【7月12日 東方新報】中国の自動車大手、長安汽車(Changan Automobile)は6月30日から、自動車の遠隔監視、360度パノラマカメラ、スマート駐車といった機能を操作するスマートフォンのアプリを停止すると発表した。中国の新興電気自動車(EV)メーカー、小鵬汽車(XPeng)は5月下旬に遠隔カメラ機能を一時停止している。比亜迪汽車(BYD)など他の自動車企業も同様の措置を取っている。

 中国では昨年9月に「データ安全法」が施行された。中国領内でのデータ処理活動について「安全保障、公共の利益、市民や組織の権利と利益を損なう」行為に対し法的責任を問うとしている。そして翌10月1日に「自動車データ安全管理規定」が施行。自動車の走行中などに収集する重要データの国内保存を義務付け、国外に持ち出す際は審査を受ける必要があるなどとしている。こうした規定を受け、自動車メーカーが次々と遠隔カメラ機能などを停止した。

 データの安全管理について自動車だけに特化した規定を定めたのは、インターネットに常時接続している最新のコネクティッドカー(つながる車)が車載カメラやセンサーを通じて大量のデータを収集できるためだ。軍事施設や非公開の政府機関の内部を撮影できれば、その情報がスパイ行為やテロ行為に悪用される恐れがある。乗用車のユーザーにその意思がなくとも、第三者がインターネット機能を乗っ取ることで違法な情報収集が可能になる。

 車の所有者のプライバシー漏えい問題もある。今年5月には高級EV「HiPhi(高合)X」の走行記録が外部に漏れているという騒動が起きた。車車間相互接続システムでビデオ共有機能をオンにすると、全国各地で運転中のHiPhi Xの車載カメラを見ることができ、ドライバーがどこを走っているか分かってしまうという。メーカー側は「車車間接続機能は納車段階では設定はオフになっている。機能をオンにしても車両の電源を切るとオフになり、プライバシー漏えいの問題はない」と弁明に追われた。

 ある調査では、コネクティッドカーは車外の映像や音声、地理情報、人・車の交通量など1日に10テラバイトのデータを収集することができるという。自動車メーカー各社は「これからの自動車の性能はデータが左右する」と開発にしのぎを削っているが、そのデータ管理が危うい状況も浮かび上がっている。(c)東方新報/AFPBB News