【7月11日 AFP】国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は10日、配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズ(Uber Technologies)が創業当初、自社ドライバーがタクシー業界から暴力行為を受けたのを利用して支持を集めたり、規制をすり抜けたりするなど、倫理的に問題で違法の可能性ある手法を使って世界進出を加速させていたと報じた。流出した同社の機密ファイルから明らかになったとしている。

 流出したのは、2013~17年のウーバー幹部間のメールやメッセージのやり取りなど12万4000件の機密ファイルのキャッシュデータ。英紙ガーディアン(Guardian)が入手し、ICIJに参加するジャーナリストに提供した。

 それによると、共同創業者で最高経営責任者(CEO)だったトラビス・カラニック(Travis Kalanick)氏は、2016年に仏パリでウーバーの市場進出への抗議デモが過熱する中、「暴力は成功を保証する」とのメッセージを他の幹部に送り、カウンターデモの実施を促すよう呼び掛けた。

 調査に関与した米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)は、ウーバーの急速な事業拡大について、ドライバーへの補助金や安価な運賃でタクシー業界を切り崩す手法に支えられていたが「タクシー・配車サービスの営業許可を取得しようとしないことも多かった」と報じた。

 ウーバーのドライバーは欧州各地で、生活が脅かされていると感じたタクシー運転手からの暴力的な報復に直面していた。同紙によれば、今回の調査で「ウーバー幹部は、ドライバーが攻撃を受けるとすぐさまそれを利用して」一般市民や規制当局に支援を働き掛けていたことが分かった。

 またガーディアンは、ウーバーがベルギー、オランダ、スペイン、イタリアなど欧州各国で自社ドライバーを動員して同様の戦術を展開し、暴力行為の被害に遭った場合には警察に苦情を申し立て、報道を利用して当局の譲歩を引き出そうとしていたと伝えた。

 カラニック氏は、強引な経営手法や複数回に及ぶ性的・心理的ハラスメントに関する告発を受け、2017年にCEOを辞任した。同氏の広報担当者は、今回の報道内容を強く否定。「誤った意図」に基づいた調査結果であり、同氏が「ドライバーの安全を犠牲にして暴力を利用すべきだと示唆したことは一度もない」と反論した。

 一方、ウーバーは10日、責任はカラニック氏の下で当時の経営陣が犯した「過ち」にあると指摘。「われわれは対立の時代から協力の時代へと移行した。交渉を通じて、かつて敵対した労働組合やタクシー会社などとも落としどころを見いだそうとしている」とし、ダラ・コスロシャヒ(Dara Khosrowshahi)現CEOが「ウーバー運営のあらゆる面について改革に乗り出している」と強調した。(c)AFP