■「優しい」声

 新型コロナウイルスが流行し、世の中に影を落とした時期、柴崎さんのチャンネル登録者数は急増した。

 2020年4月の動画で柴崎さんは、コロナで外出できない間も「一緒に絵を描いて、元気に希望を取り戻そう」と語り掛けながら、毛のふわふわした猫の描き方を説明した。

 この動画には「ほっとしてリラックスできる」という感想や、柴崎さんの「優しい」声が「温かくて落ち着ける」といったコメントがさまざまな言語で寄せられる。

「声がすごくいいっておっしゃるんだけど、さてどこがいいんだろうと自分では全然分からないんです」と柴崎さんは笑う。

 ゆっくりと穏やかな話し方は視聴者を安心させ、中には柴崎さんを人生相談の相手のように見なす人もいる。

 6度の心臓手術を経験した柴崎さんは、「そういう状態だと、死んじゃうというのが具体的なイメージ(として)浮かぶ」と言い、人から打ち明けられる相談事も本当に理解できると語る。

 幼い頃から絵を描くのが好きだった柴崎さんだが、農家に育ち、跡を継ぐよう言われるのではないかと思っていた。18歳になった時、東京で美術を学ぶ夢を諦めきれず、学校から帰ったあとすぐに田植えをしていた両親に伝えた。すると2人はその望みを後押ししてくれた。柴崎さんはとても感謝していると言う。

 その後、絵画講師となった柴崎さん。(常に)心がけているのは、動画で配信しているように分かりやすくアドバイスすることだ。

 可能な限り、絵を描き続けたいと語る柴崎さん。「どんな絵描きでも、必ず絵が描けなくなるんですよ。目も悪くなったり、手が震えたり」

「自分はもう75(歳)になるから、まともに絵がかけるのはあと5年ぐらいかなと思っています。だからその間に残せるものがあるのなら、この世の中に残していきたいなと思っています」と語った。(c)AFP/Natsuko FUKUE