【7月5日 東方新報】7月1日に中国返還25周年を迎えた香港。面積1110平方キロメートル(東京都の約半分)で741万人(2021年)の人口を抱える香港は、アジア通貨危機や重症急性呼吸器症候群(SARS)などの危機を乗り越え、経済発展を遂げてきた。

 1997年7月1日午前0時、香港島・湾仔(Wan Chai)で行われた主権移行式典の会場で、英国国旗のユニオンジャックに変わり中国国旗の五星紅旗が翻った。香港駐留英国軍は人民解放軍に基地を明け渡した。最後の香港総督クリストファー・パッテン(Christopher Francis Patten)氏は前日深夜、英王室船のロイヤル・ヨット・ブリタニア号(Royal Yacht Britannia)に乗り香港に別れを告げた。

 新生・香港は直後から荒波にさらされた。返還翌日の7月2日、タイ・バーツがドルとの変動相場制に移行し、そこから始まったアジア通貨危機により、香港ドルも激しい売り圧力を受けた。香港金融管理局は外国為替市場介入と高金利誘導などを実行。従来の「レッセフェール(自由放任主義)」や「積極的不介入主義」と異なる経済政策で危機の乗り越えを図ったが、1998年は異例のマイナス成長に陥り、長期のデフレが続いた。

 2003年にはSARS禍に見舞われた。香港市民が続々と感染し、観光業や小売業などのサービス業などが大打撃を受けた。中国政府は経済支援策として、中国本土住民の香港個人旅行を段階的に解禁。経済成長を遂げて消費力が向上した本土住民の人民元が歓迎された。その後、転売目的で粉ミルクなどを買い占める「運び屋」の登場、香港の永住権を取得するための越境出産、不動産投機による高騰などで中国本土住民への反発も生まれた。

 紆余(うよ)曲折を経てきた香港経済だが、英米系の透明な法制度や、法人税や個人所得税が簡素で低率という特徴は維持し続けた。2021年のGDPは1997年の2倍以上となる3681億3700万ドル(約49兆7389億円)で、国・地域別で世界40位。パキスタンやチリ、フィンランド、ポルトガル、ニュージーランドなどを上回っている。世界100以上の都市の金融競争力を示す「世界金融センター指数」では、2020年に6位に転落して衝撃を与えたが、その後はニューヨーク、ロンドンに次ぐ3位の「定位置」を取り戻している。

 この25年間で大きな特徴は、中国本土との経済関係の強化だ。2020年の輸入は中国45%、台湾9.5%、シンガポール7.4%、日本5.6%、輸出は中国59%、米国6.6%、日本2.8%といずれも中国との取引が圧倒的だ。香港株式市場の時価総額は1997年から2021年にかけて13倍となる中、ハンセン指数の構成銘柄に占める中国本土系銘柄は7割近くとなった。

 2020年から始まったコロナ禍により、観光業などのサービス業は大打撃を受けている。若者の失業率は高く、庶民が不動産を手にするのは難しいなど、経済成長の果実が市民に広く行き渡っていない現実もある。中国政府は香港、マカオと広東省(Guangdong)の都市を一大経済圏とする「大湾区構想」を推進。香港と本土を結ぶ高速鉄道や全長55キロの海上橋が完成し、本土と一体となった経済発展を目指している。(c)東方新報/AFPBB News