【6月30日 AFP】米ニューヨーク州ブルックリン(Brooklyn)の連邦地裁は29日、数十年にわたり性犯罪組織を率いていたとして有罪評決を受けていた米R&B歌手のR・ケリー(R. Kelly)被告(55)に、禁錮30年の判決を言い渡した。

 検察は禁錮25年を求刑していた。

 ケリー被告は「アイ・ビリーブ・アイ・キャン・フライ(I Believe I Can Fly)」などのヒット曲で知られ、グラミー賞(Grammy Awards)を3度受賞している。

 被害者の一人、リゼット・マルティネス(Lizzette Martinez)さんは裁判所の前で、被告が収監され「これ以上誰かを傷つけることがなくなるのに感謝する」と話した。

 ケリー被告は昨年9月、組織犯罪を含む9件の罪状すべてについて有罪評決を受けていた。

 弁護人のジェニファー・ボンジャン(Jennifer Bonjean)氏は、被告は性的に虐待されていたことも含め「混沌(こんとん)とした」家庭環境の被害者だと主張。記者団には控訴する予定だと述べた。

 ケリー被告の犯罪行為はセクハラ告発運動「#MeToo(私も)」で表面化した。被告の大半を黒人女性が占めるという、これまでにない性的虐待裁判となった。

 裁判では被害者11人を含む45人の証人が呼ばれた。公判では、ケリー被告が自身の名声を利用し、立場の弱い人を餌食にしてきたことが明らかになった。被害者らはレイプや薬物混入、監禁、児童ポルノなどの被害に遭ったと証言した。

 被害者の多くはコンサート会場などで、被告の側近から連絡先を書いた紙を渡された。うち何人かは、被告に音楽業界デビューを後押しできると言われた。

 また、今回の裁判の核心となったのは、被告と歌手の故アリーヤ(Aaliyah)さんとの関係だった。

 被告はアリーヤさんのファースト・アルバム「エイジ・エイント・ナッシング・バット・ア・ナンバー(Age Ain't Nothin' But A Number、年齢などただの数字)」をプロデュースした後、当時15歳だったアリーヤさんと違法に結婚した。アリーヤさんを妊娠させたと思い、訴追を逃れるためだった。

 被告の元マネジャーは裁判で、2人の結婚を可能にするため、身分証明書の発行担当者に賄賂を渡しアリーヤさんの偽のIDを入手したと認めた。この結婚は後に、無効とされた。(c)AFP/Ana FERNANDEZ and Peter HUTCHISON