【7月9日 AFP】元工学生のルイ・マケックニー(Louis McKechnie)さんは、英国の環境活動家の中で最も知られた顔の一人だ。21歳にしてすでに逮捕歴20回。禁錮6週の実刑を受けたこともある。

 マケックニーさんはこの2年間、気候変動の危機を訴える「絶滅への反逆(Extinction Rebellion)」などいくつかの団体を渡り歩き、現在は化石燃料事業の許認可停止を求める「ジャスト・ストップ・オイル(Just Stop Oil)」の専従活動家だ。

 今年3月には英国のサッカー1部リーグ、ニューカッスル・ユナイテッド(Newcastle United)対エバートン(Everton)の試合中、ゴールポストに体を縛り付け、スタジアムにいた4万人の観衆に罵倒された。

「本気で怖かった」とAFPに語ったマケックニーさん。試合に夢中になっているファンの邪魔をすることに「罪悪感」はあったと話すが、試合は7分間中断された。

「彼ら(ファン)のためでもあるのです。政府がうそをついていることを、みんなは知る権利がある」

 怒った観客の一人に頭を蹴られたのは感じなかったというが、その後、何百件もの殺害予告を受け、ソーシャルメディアをやめざるを得なかった。

■「利己的な少数の反対派」と呼ばれ

「社会から敵視されるだろうとは思っていました…けれど、その代償は喜んで払います」とマケックニーさんは言う。ジャスト・ストップ・オイルのことを後からインターネットで調べてくれた観客がほんの一部でもいたなら、やった価値はあったと考えている。

「戦術に賛同してもらう必要はありません。メッセージに賛同してもらえればいいのです」

 マケックニーさんの最初の直接行動は、単独での道路封鎖による抗議だった。以来、英国アカデミー賞(British Academy Film Awards)のレッドカーペットに乱入した他、スコットランドの石油ターミナルでは高さ15メートルのパイプの上を53時間にわたって占拠した。そして、ロンドンの環状高速道路M25を封鎖する抗議行動でついに刑務所に入れられた。21歳の誕生日だった。

 裁判では判事に、「民主的な社会において一般市民は、社会契約によって平和的な抗議活動をある程度容認するよう求められる」が、その社会契約を逸脱していると非難された。しかし、獄中では、近寄ってきた2人の受刑者に感謝を伝えられたという。

 批判の急先鋒(せんぽう)はデーリー・メール(Daily Mail)など右派の大衆紙で、マケックニーさんらを「エコ・アナキスト」と呼び、「破壊活動」を行っていると糾弾している。

 英政府はマケックニーさんのような活動家を一般市民の生活を混乱させる「利己的な少数の反対派」と呼び、「ゲリラ」的な手法に対する法的措置の強化を検討している。

 しかし、マケックニーさんはひるまない。「僕たちはやめるつもりはありません。気候危機の方がずっと怖い」