【6月26日 東方新報】「産業のコメ」と言われ、車やスマートフォン、パソコンなどあらゆる製品に使われる半導体。その世界的な製造拠点である中国・上海市では6月1日に外出制限が解除されて以降、工場の生産再開が進んでいる。上海市の半導体産業は1000億元(約2兆円)規模といわれ、生産停滞は世界経済への影響も懸念されていたが、コロナ禍を乗り切った。

 上海市は半導体受託製造(ファウンドリー)国内最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)をはじめ華虹集団(Huahong Group)、日月光集団(ASE Group)、沪硅産業集団(National Silicon Industry Group)など多くの半導体企業が拠点を構えている。ICチップ(半導体集積回路)の材料となるウエハーは、国内で製造される9割(外資・合弁企業除く)が上海市に集中している。

 調査会社・芯謀研究(ICwise)の顧文軍(Gu Wenjun)会長は「SMICや華虹などが生産を停止すれば、国内の1000社以上の半導体関連企業に影響を与え、さらに自動車やスマートフォン、テレビ、セットトップボックスなど多くの業界に打撃を与える」とその影響力を語る。

 上海市は3月下旬から外出制限措置が敷かれ、工場の生産も停止された。コロナ禍が長期化すると、工業情報化省は4月に入り、従業員が外部との接触を避ける「クローズドループ勤務」などの感染防止策のもと、工場の再開を認める重要企業リスト(ホワイトリスト)を発表。半導体企業など666社が選ばれた。限定的ながら工場の稼働を続けたことにより、6月1日以降の速やかな本格生産につなげた。

 SMIC共同CEOの趙海軍(Zhao Haijun)氏は「わが社の生産ラインは100%回復した。Wi-Fi6(最新のWi-Fi規格の)やMCU(電子製品の頭脳となる制御装置)に使う半導体の需要に対応している」と話す。

 中国政府が成長戦力として力を入れている5Gネットワークや電気自動車(EV)、人工知能(AI)、クリーン産業などの分野では、いずれも半導体は欠かせない。例えばEVは1台につきガソリン車の数倍の半導体を必要とする。上海の半導体産業の復活は、中国経済全体の安定成長につながる。(c)東方新報/AFPBB News