■ロシア支配下のマリウポリ、電気や水のない生活

 アゾフスターリ製鉄所内の戦闘員は、1か月以上ロシア軍の攻撃に耐えたが、市内の他の場所は、ロシア軍の包囲により壊滅的な被害を受け、既に制圧されていた。

 ロシア軍に投降したウクライナ兵約2000人は、同国東部の親ロ派武装勢力に拘束されているとみられている。ロシア側は、投降兵は裁判にかけられるべきだと主張している。

 製鉄所に対する攻撃に加わったという親ロ派戦闘員から話を聞いた。モルドバの親ロ派支配地域「沿ドニエストル・モルドバ共和国」出身で、2014年からウクライナ東部で活動しているという戦闘員は、製鉄所への攻撃では戦闘機が「大きな役割」を果たし、それがウクライナ兵の投降につながったと述べた。

 また、ロシアの対ウクライナ侵攻の象徴となっている「Z」の文字が入った帽子をかぶったウクライナ東部ドネツク(Donetsk)地方出身の別の戦闘員は、「アゾフ(連隊)の戦闘員の7割はマリウポリ出身で、地元住民だった」とし、だからこそ家族を製鉄所に連れて来て一緒に避難していたのだと語った。これは、製鉄所内の戦闘員を「民族主義者」とし、大半がウクライナの他の地域から集まって来ていたというロシア側の公式見解とは食い違う発言となった。

 製鉄所の地下からは、戦闘員と共に身を隠していた女性や子どもを含む民間人数百人も退避した。

 マリウポリでの3か月に及ぶ戦闘では、何十万という人々が命懸けの避難を余儀なくされ、数え切れない苦痛と死がもたらされた。

 市内に残った人々は今、ロシアの支配下での新生活に適応しようとしている。AFPの取材に応じた複数の住民が、電気と水がないのが何より困るとこぼした。(c)AFP/Andrey BORODULIN