【7月14日 AFP】オーストラリア出身のトランスジェンダーの元ラグビー選手、キャロライン・ライト(Caroline Layt)さんは、20年近く前にチームメートから暴行を受けたことがある。ライトさんは今、新しい世代の選手たちが、自分らしくあろうとしたがために罰を受けることを危惧している。

 ライトさんが批判しているのは、13人制の統括団体である国際ラグビーリーグ連盟(IRL)が6月21日に打ち出した方針だ。連盟は、トランスジェンダー選手の国際試合への出場を禁止し、同時に調査を実施して2023年に最終的な新方針を打ち出すと発表した。

 ライトさんは、性別移行の前と後の両方でラグビーをプレーした。3年にわたるホルモン治療の後、1998年に手術を受けて女子選手になると、トップレベルで活躍し、13人制のニューサウスウェールズ(New South Wales)州代表も経験。56歳となった現在は、トランスジェンダー選手をテーマにした記事を書いたり、活動をしたりしている。

 しかし、現役時代はつらい経験の連続だった。2005年にはトランスジェンダーであることが知られ、自分に対する人々の見方が変わった。

 当時について、ライトさんはAFPのインタビューで「最上階から屋外トイレへ転落した感じだった」と話す。所属クラブでの練習中にチームメートから「暴行」され、翌年に別のチームへ移った後も、ひどいラフプレーの標的になった。

「その後、何人かの選手からは謝罪があった」。「謝罪もせず、意見や態度も変わっていない人もいる。だけど変わった選手には本当に感謝しているし、友人になれたと思っている」とライトさんは話す。

 トランスジェンダー選手を除外する連盟の判断には「本当に失望している」と言い、連盟は「流れに便乗した」と嘆く。連盟の発表の前日には、国際水泳連盟(FINA)が、トランスジェンダー選手が女子の部に出場することを実質的に禁止し、「オープンカテゴリー」を新設する方向であることを明かしていた。

「私たちも人間。感情があるし、自分たちだけがやり玉に挙げられているように感じる」。ライトさんはそう主張し、「私たちが生まれつき、もしくは幼い頃から女性だったという事実には耳を貸すつもりがないようだ」と訴える。4歳の頃から自分が女性だと感じていたというライトさんは、当時の社会情勢が異なっていれば、男性として思春期を過ごす必要もなかったかもしれないと話している。

「性別を移行すれば罰を受け、(男性として)思春期を経験しても罰を受ける」

「私たちは『お前らはいらない』と言われているに等しい」

 ライトさんは、トランスジェンダー選手が女子選手と比べて必ずしも肉体的に有利だとは考えておらず、「皆身長も違うし、体重も、体格も同じではない」と主張する。そして、移行から一定の年数が経過した選手にはエリートレベルでのプレーを許可するなど、ケース・バイ・ケースで科学的な基準を定めてほしいと統括団体に呼びかける。

 今のところ、トランスジェンダーの少女や若者にラグビーは勧められないという。ライトさんは「私だったら、隠れていなさいと言う。もしくは、もっとインクルーシブなスポーツを選んでもらう」と話している。(c)AFP