【6月25日 AFP】ウクライナの首都キーウ近郊のイルピン(Irpin)にあるウラジーミル・メルニク(Vladimir Melnik)さん(73)の自宅は、ロシア軍のミサイルによって焼け焦げたがれきと化してしまった。

 3か月後、廃虚となったイルピンに戻ったメルニクさんは、自宅を破壊された人々のための仮設住宅として改造された列車の車両で生活している。

「ミサイルが屋根と天井を突き抜けて地下室へ落ちたのですが、何とか助かりました」。3月10日に焼け落ちた家の白黒写真を見せながら話すメルニクさんは以来、姉と一緒に暮らす。「必要なだけここに滞在していいと言われました」

 ウクライナ鉄道は「鉄の町」と呼ばれている改造列車を今月公開した。車両5台に最大25世帯を収容できるという。車内にはエアコンから浴室設備、コーヒーメーカーまで装備され、米富豪イーロン・マスク(Elon Musk)氏が提供するインターネット通信衛星「スターリンク(Starlink)」にWiFi接続もできる。

 食堂車では毎日、NGOが用意する食事が出される。また、7号車にはシャワー室と更衣室、洗濯機が設置されている。

 屋外にはレクリエーション用のスペースがあり、子どもたちの小さな遊び場やバーベキューエリア、ベンチ、木のテーブルや二つのハンモックが用意されている。

 この場所は、イルピンの住民が耐えてきた戦禍の恐怖とはまったく対照的な平穏さに満ちた安息の地となっている。

 メルニクさんは「自宅の損害を査定してもらって、一から建て直さなければなりませんが、時間がかかるでしょう」と語り、月々200ユーロ(約2万8000円)に満たない年金でどうやって修繕費用を捻出するか、途方に暮れていた。(c)AFP