【7月1日 AFP】3度の戦争と数えきれないほどの衝突を経験してきたインドとパキスタン両国で、暑い時期になると共通して人気を博すものがある。115年の歴史を持つ秘密のレシピで調合された赤い色の清涼飲料だ。

「ルーアフザ(Rooh Afza)」はハーブと果物を調合した非常に甘い濃縮飲料で、「魂の清涼剤」を意味する。1947年のパキスタン独立を生き延びただけではなく、いまでも両国で大人気だ。

 ある猛暑の日、インドの首都中心部オールドデリー(Old Delhi)。店主のフィローザさんは、狭い路地にバイクで届けられた氷の塊を、金属製の大きな容器に入れ細かく砕く。

 ルーアフザのふたを開け、粘り気のある、口紅のように赤い色のシロップを振りかける。牛乳も加え、スイカのかけらも入れる。

 50年の歴史を持つフィローザさん特製「シャルバット・エ・モハバット(Sharbat e Mohabbat、愛の飲み物の意)」の出来上がりだ。1杯20ルピー(約35円)で販売している。

 それぞれの店に独自レシピがある。

 フィローザさんは「10年前に夫が亡くなり店を引き継いだ。夫は40年から50年前にこの場所で、ルーアフザ売りを始めた。私の唯一の収入源になっている」とAFPに語った。

 ルーアフザはパキスタンでは、イスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」中の日没後の食事「イフタール(Iftar)」の際に、喉の渇きを癒やす飲み物として特に人気がある。

 夏の間はデザートや牛乳、カスタードに混ぜる食べ方も人気だ。

 パキスタンの大都市カラチ(Karachi)の店で働くアブドル・カハル(Abdul Qahar)さんは、ジョッキいっぱいにルーアフザを注ぎ、サイコロ状に切ったスイカとデーツ(ナツメヤシの実)をトッピングした。大勢の従業員に客に渡すよう指示を出す。

 主婦のニーラム・ファリード(Neelam Fareed)さん(25)は、ここのルーアフザを飲むためだけに5キロの道のりをモペットに乗って夫とやってきた。「魂を癒やす」と太鼓判を押した。

 ルーアフザは1907年、伝統的な治療を施すハキム・ハフィズ・アブドル・マジード(Hakim Hafiz Abdul Majeed)氏により、オールドデリーで初めて販売された。

 インドが英国から独立した1947年、マジード氏の息子の一人はデリーに残り、もう一人はパキスタンに移り住んだ。

 息子はそれぞれ、ハムダルド・インディア(Hamdard India)とハムダルド・パキスタン(Hamdard Pakistan)という会社を設立し、両国に複数の工場を設置した。そのうちの一つは、1971年に独立したバングラデシュにも存在する。

 創業者のひ孫で、インド事業を経営するハミド・アフメド(Hamid Ahmed)氏(45)によると、レシピはこの115年間変わっていない。

「(レシピは)極秘だ。工場の人たちさえ知らない。恐らく、知っているのは3人だけだ」と笑いながら語った。(c)AFP/Jalees Andrabi and Aishwarya Kumar with Ashraf Khan in Karachi