【6月9日 AFP】フランス検察が、老朽化した原子力発電所での誤作動などの事案を原発運営企業が隠蔽(いんぺい)していたとする告発を受け、捜査に着手したことが分かった。司法筋が9日、AFPに明らかにした。

 告発は、南東部トリカスタン(Tricastin)原発の男性技師が昨年10月、警察に行った。

 それによると、原発を運営するフランス電力(EDF)は、複数の事故事案を原子力安全局(ASN)に報告しなかったり、過小報告したりしていた。その中には、2017年に原子炉の一つで起きた瞬間的な電流の異常や、18年の原発内の浸水などが含まれている。

 技師は会社に事案の発生を繰り返し伝え、環境省にも文書で通知したという。

 司法筋によれば、南部マルセイユ(Marseille)の予審判事が現在、トリカスタン原発について、不正の疑いや「人命を危険にさらした」疑いがあるとして捜査している。

 この他にも、有害物質の漏えいによる環境への被害、原発規制当局による査察の妨害などの違反があったとみられている。また、技師は社内で問題を提起したところ、閑職に追いやられたと主張しており、ハラスメント(嫌がらせ)もあったとしている。

 電力需要の約7割を原発に依存しているフランスは、老朽化した原発の耐用年数の延長を模索している。トリカスタン原発など一部の原発は、上限である40年を経過していた。

 エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は今年2月、原子炉を最大14基新設する計画を発表。化石燃料への依存からの脱却の一環として原子力産業の「ルネサンス(再生)」が必要だと主張していた。(c)AFP