【6月12日 AFP】ウクライナで4月、ロシア兵がレイプを「戦争の武器」として使っているとの報告が上がり始めた。少女の健康教育に取り組むNGO「ディブチャタ(Divchata)」のユリア・スポリシュ(Yulia Sporysh)氏は、迷いながらも被害者に助言と支援を提供するホットラインを立ち上げた。

 しかし、侵攻開始から3か月が過ぎた今、電話が鳴ることはほとんどない。

 ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領をはじめウクライナ政府高官は、ロシア軍が広範かつ組織的な性的虐待を行っていると非難している。

 被害者が名乗り出ない理由について、スポリシュ氏は「いまだに非常に大きなスティグマ(差別や偏見)が残っている」「被害者が自ら招いたことではないかという考え方がある」と指摘する。

「親族やボランティアからの支援要請はあるが、被害者本人からの依頼はない」

■「恥」

 それでも、レイプによって人生を狂わされた人を支援する活動においては、まず沈黙を破るよう被害者を説得しなければならない。

 著名な人権団体「ラ・ストラーダ(La Strada)」のユリア・アナソワ(Yuliia Anasova)弁護士は、「警察に通報できない被害者も多い。専門的な治療を受ける決心さえつかない人もいる」と話す。

 今回の戦争でレイプ被害に遭った人のためにラ・ストラーダが開設したホットラインには、17人の被害に関する相談があった。被害者の1人は男性だった。「この男性は恥ずかし過ぎて医者にはかかれないと言っている」とアナソワ氏。

 ラ・ストラーダが接触した被害者は全員、ロシア兵にレイプされたと訴えた。被害現場の多くは自宅だったという。だが、公式に被害届を出したのは3人だけだ。「治療を受けることよりも、警察に行くことの方を嫌がる」

 アナソワ氏によると、ウクライナの警官は性暴力被害の捜査においては訓練不足で、被害者が国際機関の勧告に反する尋問や診察を受けさせられる事例が相次いでいる。