【6月9日 AFP】ベルギーのフィリップ国王(King Philippe)は8日、旧植民地コンゴ民主共和国(旧ザイール)の首都キンシャサの議会前で演説し、「パターナリズム(父権主義)と人種差別」に基づく植民地支配により同国に与えた「苦痛と屈辱」に対し、遺憾の意を改めて表明した。

 フィリップ国王は7日から6日間の予定で、和解のためコンゴを訪問中。

 国王の高祖父の兄レオポルド2世(King Leopold II、1865~1909年在位)は、1885年から1908年にかけて現在のコンゴに当たる地域がベルギーの植民地になる前に私有地として支配していた。

 歴史家によれば、レオポルド2世の統治下で住人はゴムの採集に駆り出され、数百万人が殺害されたり、病死したりした。鉱物資源や木材、象牙も略奪された。

 フィリップ国王は2020年、コンゴのフェリックス・チセケディ(Felix Tshisekedi)大統領に宛てた書簡で、植民地支配について「遺憾の極み」を伝えた。

 今回、国王は「植民地体制は不平等な関係に基づくもので、正当化され得ない」と踏み込み、遺憾の念を強めたが、植民地時代に犯した罪を謝罪するには至らなかった。

 国王は演説に先立ち、キンシャサにある国立博物館を訪れ、スク(Suku)人が儀式に用いる仮面を手渡した。ベルギーの王立中央アフリカ博物館(Royal Museum for Central Africa)から「無期限に」貸し出されたものだと説明した。

 ベルギー政府は昨年、植民地時代に略奪した工芸品の返還に関する行程表を策定している。

 コンゴの実業家の男性は今回の返還について「支配者が持ち去ったのだから返還するのは当たり前だ」と述べた。公務員の男性も「コンゴは変わり、前進している」として、「自分たちのものを取り戻す時が来た」と話した。(c)AFP/Bienvenu-Marie Bakumanya